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三秒殺しの日常  作者: 縁碕 りんご
CASE2:KANADE
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なんでそこで出てくる

 中学受験に失敗し、「ワル」に憧れた少年だった。いつも母親を大嫌いだと言って、「あの女」を殺す計画を立てていると告げてきたので思い切り蹴っ飛ばしてやった。


 こいつも、こいつの親も、お互いを何にも分かってないと思ったから。


 ***


 「友永くん!」

 職員室から出てきた彼をさっそく捕まえようと足を一歩踏み出した時だった。私は、もう一人の男性が出てきたことに気付いて足を止めた。

 むっつりした琴峰パパとは違って、すごく優しそうなおじさんって感じだ。すぐに父親だとわかった。

 

 「…沢原さん」

 浮かない表情で、ネガティブボーイはこっちを見てくる。

 「まさか、バスケを…」

 「うん、辞めたよ」

 「えっと…学校まで辞めたりしないよね」

 「本来、学校を辞めるべきなのは水瀬透のはずだがね。息子を殴ったんだから」と、友永パパは「困ったもんだ」って感じで口を挟んできた。


 …男性の外見を見ると、とても話にきいているような自分にも息子にも厳しい、やりすぎな親だとは思えない。すごく優しそうだ。


 「なんで?バスケは続けたいって…」

 「私が辞めさせたんだ。何も関係ない息子に八つ当たりする奴がいる部活には置いておけない」

 私はアルビノボーイに質問しているんですけど。…本人の目は相変わらず虚ろだ。

 「君は…沢原千華、と言ったね。奏から話はきいている。ありがとう、奏を助けてくれて。本当に感謝しているよ」

 「いえ、そんな…」

 だから私は超絶ネガティブアルビノボーイに話をききたいんであって、あんたに質問してない!そしてその話は皆知らないことになってる、下手に喋られたら困る!

 …とはいえず、

 「奏、いろいろと気をつけるんだよ」とそのお節介パパは告げて、階段を下りていった。

 

 残された二人の間の無言の沈黙。


 「…おい。どういうことか説明してくれる?」

 「わかんないよ、僕にも…何があったかなんて。ただ水瀬くんが…殴ってきて」と、こいつはまたごにょごにょと言葉を濁した。


 …また嘘ついてる。

 じゃあなんで昨日、「君は知らなくていいんだ」なんてかっこよく逃げていったわけ?


 「嘘つきが…」

 「わかってる。僕は嘘つきだよ。嫌われても仕方ない。実際、どうしてそんな短時間でギプスがとれたんだ?って皆に訊かれていろいろ考えてるし…でもね、沢原さんにしか頼めないことがあるんだ」

 真っ赤な目が、私に訴えかけてきた。紙袋を差し出されて覗くと、入っていたのはバスケ部のユニフォームとか、ボールとかシューズとかの類。私は慌てて回りから見えないように紙袋を抱えた。…なんでこんなものを。過激派女子に見られたら大変だ。

 「これを持っていてほしい」

 「え?なんで?」

 「僕は、何とかしてバスケを再開したいと思ってる。…水瀬くんのことも、何とかしたい。その為には、これをちゃんと持っておかないとダメなんだ。うちに置いておくと無事じゃ済まないから」

 あの父親の後ろ姿が目に浮かぶ。…あまり想像できないけど、ドラマにあったみたいにユニフォームが捨てられてしまうんだろうか。

 「…一昨日の…ダメだったんだね」

 高熱を出していた友永くんの顔色はまだ悪い。ちゃんと学校に来られたことが不思議なくらいだ。

 「シカトだよ。バスケを続けたいって言った途端、シカトさ。で、昨日になって何故か水瀬くんが…」

 「本当は何か知っているんじゃないの」

 そう言って、私は無言で自分より背丈が倍ある友永くんを睨みつける。対する友永くんは、あたりを見回すと、苦笑して言った。

 「3時間目の授業をサボっておいで。その時に話そう」

 「……」



 …また私に授業を抜け出せってか!


 

 ***

 

 珍しい。私は生徒会室に来て純粋にそう思った。

 何故ならいつも生徒会室に溜まっている赤メッシュ男とか、(こいつは時々ちゃんと授業出るけど)変態モデルやらがいないから。いるのはただ一人、友永奏だけ。

 一旦保健室に行って待機していたから、友永ファンの過激派女子にマークされることもなく、すんなりとここまで来られた。私は過激派に対する緊張を解いて、ゆっくりとソファーに沈み込む。そこへ友永くんが向かい側のソファーに回り込んできた。

 「ユニフォームは?」

 「ロッカーに入れて厳重に保護してある」

 「よかった…あの女の子達にとられたくはなかったから、ちょっと心配してたんだ」

 「…そ、そう」

 …バスケ部のユニフォームに群がり、ひとつひとつを“レアもの”として盗っていこうとする姫ギャル達を想像した。

 「何から話そうか…そうそう、停学処分の原因になった“写真”のことだよね。不良かどうか知らないけど…そもそも彼は、そんないかがわしいところには行ってないんだよ。で、一緒に映っていたのは二人だけだ」

 (うん、不良だったら私が把握しているはずだから)と心の中で相槌を打つ。

 「彼らの名前は、島崎良と――――…」


 …あっれえ。


 「…すみません。そいつ、私知ってます…」



 どうしてここで、こんなにも聞き覚えありすぎる名前がでてくるのカナ~?

 

 


 というわけで。

 その日の放課後、私は一旦帰宅してジャージ…ではなく普通の長袖の服とスカート(もちろん短パンつき)にニ―ソ、さらにブーツを履いてめったにしないお洒落をして、その「いかがわしい街」にいた。何故なら普段のジャージだと余りにその店の前では場違いで、逆に目立ってしまうから。

 「姐さん!おまた~」

 気持ちの悪いテンションで後から襲い来る男が一人。私は思い切り背負い投げしたくなるのを我慢して、思い切り肘をいれた。

 「デートしてほしいわけじゃなくて、訊きたいことがあるんだよ」

 「え~」とぶーぶー文句をたれ…かっこよく普段の「制服」みたいな背広を着た過去に平気で年齢詐称していたホスト。


 菱川大輔は、「ひさしぶり☆」とウィンクしてきた。


 

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