必然の…その、表現
学校始まりました。更新ペースは安定していくと思います。
「沢原さん。家から迎えをよこしてもらえるみたいだから、もう帰ってくれていいよ。今日はもう充分、君にお世話になったから」スマホを確認した友永くんは笑顔で言った。
「父さんは大学だし、お母さんは運転できないし。電話しておいてよかったよ。おかげで夜まで学校で待たされることはなくなったから。いちいち付き合ってくれてありがとう、本当に」
「…もしかして、運転手つきの…?お金持ちだなあ。…でもまた殴られるんじゃない?、大丈夫なの?」
「俺だって男だよ、沢原さん」
いつの間にか、彼の口調はボクッ子ではなくなっていた。
「俺、何の為にバスケで鍛えてたんだろうな?俺、沢原さんに言われてよく記憶を思い返していたんだ。…考えてみれば、俺は力も強い。沢原さんを助けて蘇生させたのは俺だ。…やっぱりバスケは、本当の俺を引き出してくれる。バスケは続けたい」
あれ…ネガティブアルビノボーイはどこへやら。熱を出しながらも、彼の瞳に光が戻っている。
「すっごい!ごくまれに見られる本当はポジティブボーイ!」
「あのね…今俺が動けないから調子にのってる?」
「あっはは、言葉に反応するんだったらもう元気じゃん」
よかった…これでもういきなり居なくなったと思ったら飛び降りていた、なんてことはないかもしれない。万が一の時の為にいつでも力ずくで止めるつもりではいるけど。
「じゃあ、お礼を言ってほしいんだけど」と彼は意地悪そうに笑った。
「沢原さんを助けて“蘇生”させたのは俺。この意味わかる?」
「え、そりゃあ…」
水を大量に飲んでいて意識が混濁していた。そんな時は人口…
あれ?
え?
もしかして…
「あ、あんた…」
「ふふ。やっぱり、今さら気付いたんだ。よかったね、学校一の人気者の一人にキ…「あー言うなあああああ!!!」あっははは…」
今度はこいつが勝ち誇ったように、けど元気がなさげに笑いだすパターンだった。
「なんで、嘘だろ…」
私は今すぐ顔を洗いに行きたくなった。こんなイベントに対する免疫は持ってない。片手は行き場もなくふらふらして、もう片手は自分の口にかざす。
「顔真っ赤~」
「うるさい!病人じゃなかったらぶん殴れるのに!…ううう」
怒鳴り返そうとして、こいつがしたことは必然であったことを思い出す。それがなかったら今頃私は病院にもう一度緊急搬送されていただろうという事実も。
「もう帰るから、何かあったらメールで連絡して!…今回は仕方なかったけど、同じことはニ度としないことを期待してるから」
「どうかな」
「じゃあね」
私はさっさとカバンと、かわかしておいた体操服を入れた紙袋を持って保健室から全速力で離れる。やっぱり恨むぞアルビノボーイ!!お前が妙な自殺願望を起こさなければ、私が…こんなに動揺することはなかったのに。
あれは私の命を救うための必然でしかないのに、変な妄想が沸きあがってくる。たとえば17年この方、男をそういう目で見たことがなかったこととか、あいつはもしかして、
自分に気があるんじゃないかとか。
(女々しい…っ!)
バカみたい。私はさっさと帰ることにする。
家に帰ると、アリスが「おかえり~」なんてハイテンションで出迎えてくれた。
「お兄さん、なだめてください。センが帰らない、またケンカしてるんじゃないかって、心配してたヨ」げっ!
「ちょっと兄さん!どうして畳を転げまわってるの!ほら、アリスの勉強道具尻に敷いてるじゃん!起きろやこのシスコン」
ガッとシスコンの腰と床の間に足を指し込み蹴っ飛ばすとすぐに起きあがった。
…今日も一日がドタバタと終わって行く…
今さらながら、あのムカつくアルビノボーイの為に貴重な時間を無駄にしたことが悔やまれてきた。
「兄さん!私が反抗期だとか言ってまた床転がったら今度は頭蹴っ飛ばすぞ」
私は昔も今も、こんな脅しが得意中の得意だ。
でも、知る由もなかった。
彼の行動が、まさか彼のチームメイトを窮地に立たせることになるとは。
その災難は巡り巡って、彼のところへ戻ってくる。




