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三秒殺しの日常  作者: 縁碕 りんご
日常~4月下旬~5月上旬
27/104

え…制服じゃダメなわけ…?

 「…」

 

 合コンパーティは一日で終わるわけがないことを、私は忘れていた。それはまだいい。


 「ねえ、私服おkってどういうこと?」

 「皆が私服を着てくるに決まってるっしょ。ばっちり決めてくるはずだろうね、女の子達は」

 赤メッシュにばっさり斬られた。何でも、それぞれの魅力を引き出す為らしい。この辺が、堅苦しいお見合いパーティーとは違うところだ。

 「制服じゃ、ダメなわけ…?」

 「そうだな。その日に制服なんか着ていったら笑われるぞ」


 私そんなに可愛い服もってない…今まで欠片も興味がなかった為に、揃えていなかった。ううん、仮に揃えていたとしても、お嬢様達の間じゃ「流行遅れ」って笑われるのがオチだ。そして私に女の子らしい服…ダメだ。最高に似合わない。

 そして私は、やたらと人前でニ―ハイソックスに包まれた両足を晒すことができない事情がある。


 「沢原さん…」アルビノボーイがくすくすと笑いだした。

 「私服、ってどういう意味なのかわかってる?」

 「え?」

 「ドレスとか、スーツのことだよ」


 はぁ?まさかのドレスコードかよ。


 はぁ?


 「はぁ~~~!!!???」




 『ねえ、千華。そのパーティ、病欠じゃダメなのかな?』

 兄さんに電話すると、案の定、兄さんも頭を抱えていた。

 「電話がかかってきて、先生まで迎えに来るらしい…まぁ、うちみたいな貧乏娘をご指名の奴はいないだろうけど。放っておいてもらえる確率はあるよ、特待生であっても、結婚させる価値のない子ってことで。私は有名大学に行く為に雇われた傭兵みたいなもんだよ」

 『友達がお金持ちなんだから、着物とか貸してもらえたりしないかな』

 「ばーか。そんな迷惑かけられるわけないでしょ。ただでさえ、昼ごはんをなんかいろいろと奢ってもらってるし」

 『はは、最近千華は僕の弁当食べてくれないもんね~』

 「…というわけで結論。まぁ頑張って仮病使ってサボるわ。兄さんも協力してよね」

 しかしおおきな問題があった。

 

 うちの余裕のない金銭状況を知らない、留学生のアリスくんだ。


 当初、「汚い家―」とバカにされるかと身構えていたんだけど(でバカにしやがったら家から叩きだすつもりでいた)アリスはそういうところがない温厚な青年だった。むしろ我が家のちゃぶ台を熱心に眺め、うちのパソコンやテレビを見て「これが日本のハイテク技術!!」と勝手に感動してくれた。掃除機をかけた畳の上に、嬉しそうにごろごろ転がっていたアリスの姿が目に浮かぶ。

 けど、彼は温厚であると同時に、すごく真面目な子だった。

 私がひらりと階段を三段飛ばしで降りていっただけで、「女の子なのに!!」と大げさに心配されるわ、私の髪型まで「女の子はもっと髪を伸ばすべき」といちゃもんはつけるわ…

 あれ、これは「真面目」じゃなくて、「どうでもいいところを気にするやつ」だった。

 

 彼が真面目なのは、人が授業をサボることを許さない、というところだ。生徒会のことをアリスに教えてやると、「授業をSabotageするんだね」と渋い顔をしていたし、私が赤メッシュ男のいる生徒会室に仕事の報告をしにいく為授業をサボると、最初はその渋い顔をずっとこっちに向けて、「どうして勉強しないの?」と問い詰めてきた。

 彼のその真面目さは、授業ではなくバカげた恒例行事であっても、「服はどうしようかな」と真剣に考えていたことからして変わりはないらしく。


 正直言って、かなり面倒くさい。

 

 この調子で準備だけして当日とんずらして姿をくらまそうものなら、全力で私を捕まえにかかるだろう。あの俊足で追いかけられたらひとたまりもない。彼は私の仮病をすぐに見破ってしまうから、誤魔化すこともできない。

 考えて出した結論。

 「アリスには、説明するしかないな…」

 琴峰子規くんも、パーティに合わせて転校してくるらしいし。


 ***


 「えっ、ちょっと待って…なんでそんな展開になる?」

 「だって、お金がないのは仕方ないことだヨ」

 アリスなら、私の家庭環境を説明しても笑わないでくれる。その推測は確かに当たっていた。でも今度は、兄さんが言っていた通り、ならココロちゃんにキモノか何かを貸してもらおう、と言いだしてきかない。

 「わかってよアラステア。私は無理!ドレスコードとは欠片も縁のなかった家なんだよ?それこそ衣装なんて高くて手が出ないし。…っていうか、ハイヒールとか履いたことないし…これがただの私服なら、何とかできたんだけど」

 「琴峰達は、センに恩がある。事情を話さなくても、頼めば快く引き受けてくれるはずだよ」

 「私はそういうズルい真似はしたくないんだってば!これまで充分にご飯奢ってもらったのに、それ以上は…」

 「セン。この件は、話し合うつもりはないヨ。皆、センが参加すると思ってる。そんなときに欠席したら、それこそ笑い者だよ」


 

 本当に、どうしよう…


 急に不安になってきた。

 私の周囲にいる美男美女達が超人気な中で。私だけがぽつねんと一人だったら?

 

 カレシを捜そうと決めたわけじゃない。ただ、誰かと一緒にいないと、きっと疎外感が半端ない。そう気付いた時、私も女なんだなあと思い知らされた。


 

 そんな寂しい目にだけは、遭いたくない。


 

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