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三秒殺しの日常  作者: 縁碕 りんご
日常~4月下旬~5月上旬
23/104

きっと楽しくなる

 

 「はい、止めてください。後ろから順に解答用紙を集めてくださいね~」

 試験監督の声が、天から降ってきたかのように思われる。


 実力テストが終わった今、私の頭の中を占めているのが、バッドタイミングで私の誕生日…日曜日合コンパーティの拘束時間の計算。疲労する確率。夜の11時に放送中の「進○の巨人」のアニメを見ることができる確率。これはどんな勉強の課題よりも優先されるべきことだ。

 でも。

 (半分半分かな…)

 学校公認の合コンパーティなんて、疲れること請け合いだ。噂では、「カノジョに欲しいランキング」とか「カレシにしたいランキング」とかまで新聞部の手で作成されているっていうし。


 

 「めんどっくせ~…」



 先生の号令で「さようなら」と挨拶した後。皆が教室の掃除をする中、机に座って思いっきり伸びをしたところで。



 姫ギャルの一人が私の机にゴミをぶちまけようとしたので思いっきり背中を殴って気絶させた。ゴミ箱は元の場所に蹴って戻す。気絶して伸びている姫ギャルを引きずり、彼女が座っていたはずの元の席に突っ伏させておく。

 「さあ、咲真、帰ろうか」

 カバンを肩にかけて友人のところへ行くと、何故か咲真は憧れをいっぱいに湛えた目つきで私を見てきた。琴峰さんも同じ目つきで、狭い机と机の間を車椅子を器用に操作して近づいてくる。姫ギャルグループ達の殺気だった視線と、クラスメートの変な視線に見送られ、私達は留学生クラスへ向かった。

 心ちゃんが車椅子で階段は使えないので、エレベーターで留学生クラスのある5階へ向かう。その中で、私はとうとう耐えきれなくなって心ちゃんに訊いた。


 「ねえ、その変な目つきは何?」

 「ううん…千華ちゃんは、すごいなって思って」

 「なんで?…あっ、まさか、私また面倒なことしたとか?県会議員の娘を殴ったから訴えられる?」

 「大丈夫、それはないんだけど…あの子の家は男兄弟がたくさんいて、お父様は最年長の現役空手選手なものだから。皆怖がっていたのよ」

 

 え…。


 それやばくね?ゴミ箱の中身を机にぶちまけられそうになったから、反射的に気絶させたけど…


 「大丈夫よ、貴方には後ろ盾がいるもの。私にもね」ちょっと顔色がいい心ちゃんが、フォローしてくれる。

 「後ろ盾って?」

 「黒錐家に決まってるでしょう?黒錐家のお父様の意向は絶大なものです。ましてや貴方は、その息子のお気に入りなんだから。沢原千華おきにいりに、幸川さんは何もできやしません。黒錐家の息子の目にとまりたい女の子にとっては、なおさら」

 今まで口数が少なかった心ちゃんがこんなに喋ったのは初めてだった。いつも気弱だったのに、居間の言葉にはめちゃくちゃ自信が籠っている。

 「息子って…あの赤メッシュ?」

 「喧嘩が異常に強いし、頭もいいから、いつか就職先を世話してやりたいって言っていたわ」

 嘘だろ、あの赤メッシュが?私は赤メッシュの弟たる咲真を顧みた。でも彼はいつも通り、私にしか見せない微笑みを見せるだけだ。

 

 エレベーターが5階へ到着した。


 アラステアのニックネームはすでに決めてあった。「アラステア~」とひらがな日本語で呼ぶのはものすごく違和感があるし…

 「アリス!」

 日本語上級者クラスに堂々と入って行って(心ちゃんも着いてきた)、咲真よりも身長の高い彼の…肩をぎりぎり叩くことができた。彼は驚いたように振り向く。

 「え?ぼく?」

 「そう。アラステアって長いし、日本語発音で呼ぶと何だか笑ってしまいます」外国人だらけの教室なので、努めて丁寧に話しかける。

 「え、なんでヨ?」

 「変更はできません。…そうだ。アリスの“片割れ”はどこにいらっしゃるんですか?」

 心ちゃんが、アリスの指さす方向を見て嬉しそうに呼びかけた。

 「アレックス!」

 見ると、見事にアリスと見分けがつかない青年アレックスが、にこやかな笑顔で私達の方に近づいてくるところだった。…いいや…


 見分けはつく。多分。アリスの方は耳にピアスをしていて、アレックスは耳は全くもって無傷だもの。よし、それで見分けよう。

 

 それにしても…身長高いなあ。

 

 『早く身長伸ばしたい!』という、不満そうな白石くんの叫びを思い出した。




 

 身長が高い話で思い出したけど、最近白石くんはものすごく不機嫌そうだった。特に私が話したアリス君に関してはすごく苦手意識を抱いているらしい。

 「だって身長が190㎝なんでしょ?」

 「あんただってけっこう伸びてると思うけど。ほら、前は私の肩ぐらいまでしかなかったけど、私の首ぐらいまで伸びてるでしょう」

 実際本当にそうだ。だからフォローしてやった。すると彼は一時的に機嫌が治ったものだ。最近仕事で疲れてんのかな…


 「早く身長伸ばしたい!それで千華ちゃんを追い越したい!」なんでやねん。私がこいつに身長追い越されたらちょっとプライド傷つくよ。

 



 地獄の合コンパーティの準備は、刻一刻と近づいている。


 でも。平和だ。殺伐とした世界じゃなく、こうして友達と笑える世界に私が身を置いているなんて。最初は咲真だった。でも今は、琴峰心という女友達ができた。

 もうすぐ、子規くんも転校してくる。そうなれば、学校生活は…大変で、面倒くさくて。


 楽しいものになるに違いない。



  

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