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第3話:「逃避行と、生首のティータイム」

追っ手を振り切り、夜の森でひとときの休息をとる二人。首なしの身体でどうやってお茶を飲むのか?

ギロチンも思わずツッコミを入れる、優雅で狂気的な深夜のティータイム。


 王都の城壁を力押しで破壊し、俺たちは夜の森へと逃げ込んでいた。


 追っ手の気配が完全に消えた獣道で、ヴィルヘルミナはようやく歩みを止めた。

 彼女は俺——血のついた巨大なギロチンの刃を大樹の根元に立てかけると、慣れた手つきで枯れ枝を集め、小さな焚き火を作り始めた。


(おい、ヴィルヘルミナ。こんな所で火を焚いて大丈夫なのか? 煙で場所がバレるぞ)


 俺が念話で警告すると、彼女はドレスのポケットから小さな銀の筒を取り出しながら答えた。


「問題ありませんわ。私の魔力で周囲に認識阻害の結界を張りましたから。それに——」


 彼女は小脇に抱えていた自分の生首を、丁寧に膝の上に置いた。

 そして、焚き火にかけた小さな鍋でお湯を沸かし、銀の筒から取り出した茶葉を入れ始めたのだ。


「公爵令嬢たるもの、就寝前のティータイムは欠かせませんの」


(いやいやいや! 状況を考えろ! お前、さっきまで処刑されてたんだぞ!?)


「ええ。ですから、喉が渇きましたわ」


 どこから突っ込んでいいのか分からない。

 お湯が沸き、彼女は空間収納魔法アイテムボックスから取り出したらしい、瀟洒なティーカップに紅茶を注ぐ。

 芳醇な香りが夜の森に漂った。


(……で、それをどうやって飲むつもりだ?)


 俺が呆れ半分で尋ねると、首なしの胴体はカップを優雅に持ち上げ、膝の上に置かれた『生首の口』へとゆっくりと傾けた。


 コクッ、コクッ。


(飲んでる!? いや待て、首から下が無いのに、その紅茶はどこに消えてるんだ!?)


「アンデッドの身体は魔力で構成されていますから、摂取したものはそのまま魔力に変換されますの。……ふぅ、美味しい。少し薄味ですけれど、野営なら十分ですわね」


 膝の上の生首が、ほうっと満足げなため息をつく。

 シュールすぎる。美しい銀髪の令嬢が、自分の生首に紅茶を飲ませている光景は、もはや最上級のホラーだ。


「さて、口の悪いギロチンさん。これからの予定ですが」


 生首の蒼い瞳が、立てかけられた俺をスッと見据えた。


「まずは、私に『聖女暗殺未遂』の濡れ衣を着せた、第一王子ルードヴィヒと、あの偽聖女……彼らの足元を崩す必要がありますわ」


(正面から王城にカチコミをかけるんじゃないのか? さっきの勢いならやれそうだったが)


「力任せの破壊など、野蛮人のすることです。彼らには、私が味わったのと同じ……いえ、それ以上の絶望と屈辱を与えなければ、割に合いませんから」


 ティーカップを置いた首なしの胴体が、膝の上の生首の髪を、愛おしそうに撫でる。

 その所作はひどく優雅で、だからこそ、底知れぬ狂気が滲み出ていた。


「私の誇りを泥で汚した罪、きっちりと『清算』していただきますわ」


(……はっ。いいぜ、そういう陰湿な盤面ゲームは嫌いじゃない。俺の重力操作と現代の知識、全部お前の復讐にベットしてやるよ)


 こうして、首なしの令嬢と喋るギロチンの、血塗られた反逆の旅が始まったのだった。

お読みいただきありがとうございます!

生首に紅茶を飲ませるという、少しシュールでホラーな光景をお届けしました。ここからいよいよ、自分を陥れた者たちへの復讐の計画が動き出します。

引き続き応援をよろしくお願いいたします!

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