第1話:「私の首を落としたのは、口の悪いギロチンでした」
無実の罪を着せられ、断頭台へ送られた誇り高き公爵令嬢ヴィルヘルミナ。
すべてが終わるはずだった処刑の瞬間、彼女のすさまじい執念が常識を打ち破る
冷たい雨が降る、王都の処刑広場。
群衆の嘲笑と罵声が飛び交う中、公爵令嬢ヴィルヘルミナは、断頭台に縛り付けられていた。
(俺は、どうしてこんな所にいるんだ?)
俺の意識は、奇妙な浮遊感の中にあった。
見下ろせば、銀色の美しい髪をした少女の白いうなじが見える。
周囲の歓声。誰かが処刑の合図を出し、ロープを切る音。
次の瞬間、俺の体は猛烈な勢いで落下していた。
ズンッ、という重い衝撃。
生々しい感触と共に、少女の首がゴトリと石畳に転がり落ちた。
(嘘だろ……俺、ギロチンの刃になってる!?)
前世で過労死したはずの俺は、よりにもよって『処刑道具』に転生していたのだ。
鮮血に染まる俺の鋼の刃。
広場は「悪役令嬢」の死に湧き上がっている。
だが、異変はすぐに起きた。
ビクッと、首を失ったはずのヴィルヘルミナの胴体が動いたのだ。
「ひっ……!?」
「ば、馬鹿な!首は落ちたぞ!」
群衆が悲鳴を上げて後ずさる中、血に染まったドレスを着た首なしの胴体は、ゆっくりと立ち上がった。
そして、石畳に転がっていた『自分の生首』を拾い上げ、小脇に抱えたのである。
「……痛いではありませんか」
生首の唇が動き、凛とした声が響いた。
周囲はパニックに陥り、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
ヴィルヘルミナの胴体は、今度は台座に突き刺さった俺——巨大なギロチンの刃を、素手で掴み、台座ごと粉砕して軽々と引き抜いた。
華奢な少女が持てる重さではないはずなのに。
(おいおいおい!冗談だろ!?)
俺が思わず心の中でツッコミを入れると、小脇に抱えられた生首の蒼い瞳が、ギロチンの刃である俺を真っ直ぐに見つめた。
「あら? あなた、喋れるのですね」
「……は? お前、俺の声が聞こえるのか?」
「ええ、はっきりと。私の首を刎ねた無礼な刃物が、頭の中で喚いていますから」
ヴィルヘルミナは生首の状態で、ふふっと優雅に微笑んだ。
首なしの胴体が、俺の刃を片手で軽々と弄んでいる。
どう見ても悪夢のような光景だ。
「とりあえず、状況の整理をしましょうか。口の悪いギロチンさん」
「状況も何も、お前、死んだ恨みでアンデッド(デュラハン)になってるぞ……」
「濡れ衣を着せられ、誇りを踏みにじられて死ぬなど、公爵家の名に泥を塗る行為。この程度の死で、私が歩みを止めると思いましたか?」
圧倒的な執念。
デュラハンとして蘇った公爵令嬢は、俺という凶悪な質量兵器を肩に担ぎ上げた。
「さあ、参りましょうか。私を嵌めた愚か者どもに、極上の地獄を見せてあげますわ」
復讐に燃える首なし令嬢と、血塗られた処刑刃。
最悪のバディが、ここに誕生した。
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「首なし令嬢」と「喋るギロチン」という、前代未聞の凶悪バディが誕生しました。少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、下部の☆マークからの評価やブックマークを何卒よろしくお願いいたします!




