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4話:地底の月を見上げながら

 もう何歩歩いただろうか?

 

 歩けども歩けども、塔は遠く、月もはるか先だ。

 硬くデコボコな岩床を歩きすぎて足が棒の様。

 一体何時間歩いたのかさえこの極夜の世界では定かではない。

 

 俺は常世を永遠にさまよえる亡者にでもなった気分だ。

 魔物の気配を察知しては逃げ隠れ迂回しながら随分歩いている。

 

 足をなにかに引っかけてよろめいてしまう。

 また岩に躓いたのかと思ったが違った。

 暗い足元には真っ直ぐ伸びる二本の並行な鉄骨、その下には鉄骨の枕のように木の板が等間隔で、鉄骨と垂直に敷かれている。


「これはなんだろう? 二本の鉄線? 『道』なのか……?」

 

 先程高レベルの魔物を倒したことでレベルが飛躍的に上がった。

 とはいえ魔杖も折れてしまっている以上、魔物との遭遇は避けたい。

 それでも好奇心に負けた俺はその奇妙な道をたどり始める。

 その奇妙な道を進んでいくと妙な代物に出くわす。

 

 二本の鉄骨の上に巨大な馬車のようなものが鎮座していた。

 馬車にしてはでかいし、車輪も妙な形で二本の鉄骨にピッタリくっついている、そもそも馬車を引く馬がいない。

 

 これじゃ馬車というよりただの車輪付きワゴンだ。

 そしてその隣には、階段で繋がった石造りの幅広な高台があった。

 おそらく、この馬車があまりにも高すぎるから乗り込むためにあるのだろう。

 そのプラットフォームまで上がると、巨大ワゴンの乗車口が開いており、そこからまばゆい光が溢れていた。

 

 好奇心に押されるままに中に入り込むと、一列に並べられた座席と未知の車内照明が思った以上に明るい。

 これだけの大きさなら内装も王侯貴族の使うような立派なものだと想像したから、意外なほど質素であることに驚く。

 などと見とれていると――。


『人形生命体の乗車を確認。魔導列車・鉱員通勤急行・採掘エリアC発ラボラトリー行き、まもなく発車します』

 

 とどこからともなく抑揚のない音声が流れるとともに扉が閉まり、車両が動き出す。

 先程通ってきたのと同じ二本の鉄骨からなる道を辿って、廃墟の街の方向へ馬車の如き速さで進むではないか。

 

 これはいかなる魔法か? 

 それとも錬金術アルケミーで作った魔法生物の類か?

 あるいはやはり古代人類の生み出したという機械マシーネだろうか?

 

 恐らくはこのエリアを作ったのは古代文明なのだろう。

 ガタンゴトンと揺れる“魔導列車”なるもののやたらと広いシートに腰掛け、思索する。

 

 この大陸において人類の唯一信仰している宗教・神骸教コープシストの聖典に書かれていることを思い出した。


『かつて地上には古の人類が驚くほど発展した文明を持っていた。


 しかし、創造神の創造物である人類の繁栄を嫉んだ偽神・デミウルゴスが生み出した魔物によって圧迫されていき、それ見かねた創造神とデミウルゴスの戦争に巻き込まれて、文明は完全に失われてしまったという。


 創造神の神剣によってデミウルゴスの頭蓋は横一文字に切り開かれ、偽神は倒れ伏した。

 

 しかし、創造神も相打ちとなって偽神の上に倒れ伏せ、死したる創造神の躯が新たな大地となり、生命を育む土壌となった。

 

 そこに神が避難させた人類を始めとする被造種が降り立ったことが、大陸創造の瞬間である。』

 

 かくして古代人類が文明を築いたという地表は地底となり、迷宮の最下層や隠しエリアとしてその痕跡が見つかるのだという。


「まあ、でもそんなことはどうでもいいか……。今はとにかく、疲れた……」


 シートはクッションとかもなくやたら硬く、座り心地はお世辞にもいいとは言えなかった。

 

 だが今日一日――時間感覚すら定かでないが、色々ありすぎて疲れたせいか、瞼が鉛のように重くなる。魔物が怖くて一睡もできなかったから。

 

 この車両が俺の目指している方向へ向かっているのは確かだし、これに乗っている間は安全だろう。降りる理由もない。

 

 なのでこれ以上考えることすら億劫になった俺は、小気味いい振動とリズムよく回る車輪の音につられてまどろみへと落ちていった。

今回の内容はストーリーがほとんど進行しないです m(_ _)m。 次回からヒロインが登場します。


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