13話:最強武器製造
「ここがB鉱区か」
「見たところ、取れる鉱石も変わりませんね」
「さらに奥に進んでみるか」
俺たちは暗い坑道の奥へと進む。
掘削された坑道は薄暗く淀んだ空気で満たされていた。
魔物好みの環境だ。
案の定、半ば魔物の寝床と化していた。
道中の高レベルの魔物を難なく倒していく。
地底の月に出没する魔物はすべて把握しており、二人で練ってきた対策が染み付いているというのものある。
それでも蚊を焼き払うような気軽さで魔物を狩れるのは、純粋に俺たちのレベルが上ったからだろう。
半年の月日が俺たちをここまで強くしたのかと感慨深くなる。
とはいえ月の中心に巣食う魔物に対抗するにはまだ足りない。
強力な武器が必要になる。
死にたくなければ慎重であるべきだ。
先の見えない地の底ならば、なおさら。
そうして迷路のような坑道を歩いた先に、亀裂から妖しい輝きを漏らす岩壁を見つける。
「なんだろう、このあからさまに壊せそうな壁は? とりあえず腐敗せよ」
脆くなった岩壁を崩すとその内側に隠された空洞が現れた。
「ビンゴ!」
そこには目が眩みそうなほど強く光る魔鉱石が、キノコのように生い茂っていた。
「主様、あれを」
「ん?」
鉱石にばかり目が眩んで気づかなかったが、レーネが指さした先には丸められた羊皮紙がいくつも入った箱が置いてあった。
「早速、設計図の隠し場所を見つけるとは流石です、主様」
「うん? ああ。まあ、な」
ここにある鉱石はどれも効果が強力かつ、欲しい効果ばかりが揃っているのだ。
それがどうにも不自然だ。
強力な武器の設計図と一緒に使ってくれと言わんがばかりじゃないか。
研究所に戻り、何十とある羊皮紙を次々と広げる。
いずれも見たことない武器の設計図が描いてあったが、構造の説明があるので理解が出来た。
そう、理解出来はしたのだ。
ボルトで金属薬莢の弾丸を薬室に装填して排莢する機構を備えたライフル銃など、先込め式のマスケット銃が持て囃されるこの時代には斬新すぎる。
それどころかその機構を発展させて、発砲時のガス圧を利用して装填・発射・排莢自動化し大量の弾を連射できるようにした機関銃。
炸薬料の高い爆弾や、致死性の毒ガスを込めた爆弾を、安全かつ簡単に投げられるようにした手榴弾などオーパーツの数々だ。
ギリギリ理解の範疇にはあるがあまりにも難解。
我々の技術力のはるか先を行く武器の数々だ。
「これは俺には使いこなせそうにないな……」
そんな中で俺に使えそうな武器を見つける。
『月桂樹の杖』という魔杖だ。
それも――。
所持者が使用する弱体化・状態異常効果(デバフ効果)を相手に付与するごとに、相手に掛かっているデバフ効果が増加する。
所持者が与えたデバフ効果は一秒おきに効果が増大する。
デバフを与える対象が生物に限定されない。
デバッファーのためだけの武器だ。
そしてデバフの重ねがけはデバッファーとして重要な要素だ。
だから断言できる。
この武器はあり得ないくらい強い。
このふざけた性能は流石、吸血種の最終兵器として作られただけのことはある。
ちなみに月桂樹でできているというのは真っ赤な嘘で、実際には月の静かな海で採れた隕鉄でできているらしい。
さらに、半年間収集し厳選した魔鉱石の中からデバフ特化のものを強化素材として使うことで、以下の追加効果を得る。
この杖を使用し付与されたデバフ効果は戦闘中に解除不可能。
限度無くデバフを追加可能。
デバフ効果付与率アップ、相手の全デバフ効果耐性ダウン。
完璧だ。
完全無敵の最強武器の誕生だ!
いや、これだけでは、俺だけでは完璧とは言えないな。
俺の魔法はあくまで補助であり、優秀な前衛がいてこそ成り立つ。
だからと、レーネに合いそうな武器を探す。
そして山と積まれた羊皮紙の中から面白いものを見つけた。
「これなんかレーネに良さそうじゃないか?」
サーベルと似ているが異国情緒で見たことない剣。
反りの強い片刃の刀身、特徴的な鍔と鞘を持つ不思議な魅力を持った刀だ。
「これはまさしく私のために作られたような――いいえ、吸血種式抜刀術をどこまでも忠実に追求した見事な太刀にございますね。
号はなんと言うのですか?」
「ええと、こいつの名前は……『紅月』というらしい」
「紅月……! なんと禍々しくも雅な響きでしょう! 血に染まった月の名を冠するこの刀はまるで私達の行く末を暗示するかのようですね、主様」
紅月――実際、レーネの言ったようにヤバい剣だ。
デバフを含む魔法効果を受けた時、次に攻撃する相手にクリティカルヒットしたならそれと同じ効果を与える。
デバフを持っている相手に対してクリティカルダメージアップ。
効果は非常にトリッキーで一見使いづらい。
普通の剣士が使うのなら。
レーネ自身も言っていたが武器の性質があまりにも彼女に噛み合いすぎているのだ。
レーネはそもそもとしてどのスキルもクリティカル率が高く、クリティカルヒットしたら高確率でデバフの一種である出血を付与できる。
そして彼女にはバフ・デバフも、他者のかけた魔法効果は無効化されるという特性がある。これが何より俺の魔法と相性が良すぎる。
その上で使う魔鉱石は決まっていた。
クリティカル率アップ・クリティカルダメージアップ。
デバフ効果付与率アップ、相手の全デバフ効果耐性ダウン。
クリティカル関連を上げるのは鉄板として、俺の武器と同じデバフ特化をつけることで出血をつけやすくする。
伸ばすところを伸ばすことで再現性を高めるビルドだ。
早速、この2つの武器を製造する。
レーネは新しいおもちゃに目を輝かせる子供のようにウキウキしながら、これからの手足となる刀の黒地に赤い波の模様をした鞘を愛おしげに撫でる。
正直、俺も同じくらい期待に胸膨らませている。
これでどれくらい強くなったのか?
どこまで強くなれるのか?
新たな限界を見たい。
試したい。そんな欲求を抱かずにはいられない。
「嬉しそうだな」
「ええ。主様が私の特性を理解してそれに合わせてくれている。私の能力が主様の役に立っている。私が主様の良きパートナーとなっている。主様と私、二人で一つのコンビとなれる。そのことが嬉しくてたまらないのです」
思ったより感極まった反応だった。
「もちろん、レーネの存在は常に、大いに意識している。俺にとってなくてはならない大事な……」
言い淀む。
俺とレーネの関係について深く考えたことがなかった訳では無いが、いざ言葉にしてみろと言われると逡巡してしまう。
彼女と出会ってからこれまで、この過酷な地底で生き残ることに必死で、棚上げしていたツケが回ってきたか。
従者、伴侶、協力者……どれもしっくりこないと思い悩んだ挙げ句――。
「大事な仲間だからな」
と締めくくる。
新たな武器は初めて振るにしては実に手に馴染んだ。
それ以降の狩りは今までの倍の効率で進み、数秒とかからず戦闘を終わらせられるようになった。
レーネとの連携も今まで以上に意識できるようになった。
目論見通り、俺とレーネの間にシナジーが完成され、コンビとしてこれ以上ないものになった――というわけだ。
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