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12話:鉱石厳選周回

 そうして俺とレーネが地底の月で過ごして半年――。


「できたぞ! 試作103号術式、早速試そう!」

「主様、こちらにおられましたか。何をされているのですか?」

「いやなに、既存の魔法を組み合わせて新しい術式を作っていたんだ」


 この頃はレベルも上がって使える魔力量も増えてきた。

 

 それに伴い使える魔法も増えたが、なにより理論上可能とされる魔法の複合――これを試せるようになった。

 ならば試したいと思うのは、この奈落に半年堕ちてなお、俺が学徒の性分を捨てていない証左なのかもしれない。

 なに、時間はいくらでもある。

 ここならいくらでも実験できる。


「ああ、また作られたのですね。先日のは詠唱した途端、主様ご自身を麻痺させてしまわれましたが、さて、今回の術式は自信おありですか?」

「ああ、あの時は悪かったな。患部の毒抜きまでしてもらって」


「失敗は発明の母なれば。私は主様の魔法が成就するまでサポートするのみでございます」

「今度のは成功する気がする。鉱石の選別もしたい」

「ではまた採掘区に行って試し撃ちですか?」



 ……

 …………

 ………………



「今だ、レーネ!」

「『月喰・穿エクリプスストライク・スキュア』」


無防備にさらけ出された魔物の腹をレーネが貫き、その背後にいる魔物ごと串刺しにする。



「『震盪せよ(パラライズ・コンカッション)』」


 麻痺パラライズを魔物の頭に精密に打ち込むことで、一点集中された魔力で脳震盪を起こす。

 

 こうすることで体全体を麻痺させるより省エネで無力化できるというわけだ。

 こうして立てた理論通りに相手が倒れてくれのはやはり気分がいい。そして先程と同様にレーネが切り裂く。


「『麻痺毒よ、我が敵を冒せ』」


 次の新術式を他の魔物にかける。

 魔物は悶え苦しみながらも俺めがけて突進しようとするも、その手足は痺れて動かぬままだ。


「お、今回のやつは成功したみたいだな」


 レーネが「おめでとうございます、主様」と言いながら、敵にとどめを刺す。

 これで今日の戦闘はおしまい。

 

 いつものように魔鉱石の採掘を進めていく。

 鉱石の埋まる岩盤を俺の魔法で脆くし、それをレーネが崩していく。

 そうやって採った魔鉱石を厳選して保管しておく。

 これが日課だ。

 

 気が狂いそうなほど長い時間をこの奈落の底で過ごし、ひたすら戦いに明け暮れ、己を鍛える日々。

 そんな中で俺が正気を保てているのは、ひとえにレーネの存在に依るところが大きい。

 半年間の共同生活でレーネのことがよくわかった。

 

 彼女は俺のことを第一に想っている。

 そして彼女の向上心と学習能力は目を見張るモノで、僅かな調味料と魔物の肉しかない地底のここで実に様々な調理法を試し、人間の食事として不足のないように最大限の工夫をこなしている。

 

 素材が素材なだけに決して美味しくはないが、今のところ料理に不満はない。


「レベルが上がったおかげでだいぶ戦いやすくなったのはいいんだが、同時に限界も見えてきたな。う~ん、なかなかチェックから抜け出せない……」

 

 研究所に戻って来た俺たちは今日もチェスに興じている。

 長く殺伐とした日々の退屈しのぎにとレーネから教えてもらった遊びだ。

 これがなかなか奥深い。


「つまり、レベルに対して装備が貧弱と言いたいのですね」

「鋭いな」

「従者ですから。チェックです」

 俺が長考の末に指した一手に対して、レーネは読んでいたとばかりにノータイムで返していく。


「確かに私のこのサーベルもなまくらのように切れ味が悪く感じるようになってきました」

 

 鉱石の余りを用いて作った石造りのチェス盤にレーネがこれまた石でできた不格好なクイーンを指していく。


「ああ、俺たちには実力に見合った強力な武器が必要だ。やるからには徹底的に、一切妥協のない素材を厳選して最強の武器を作る」

 

 盤上ボードではおれのキングがレーネの軍勢に追われて無様に逃げ回っている。


「それに関して良い知らせがあります。先日この研究所で見つけた資料を復元した結果、研究された武器の設計図の一部がB鉱区のどこかに秘匿されていることがわかりました」


「それは本当か!?」

「はい、確度は高いかと」

「強力な武器の図面を回収しつつ、鉱石収集もできる――一石二鳥。B鉱区はまさに今の俺たちにうってつけの場所ってわけか」

「早速行きませんか? 主様と私の今の戦闘力なら問題ないかと判断します」


 レーネは「それに」とその手に持つクイーンを盤上に突きつける。

 

「ちょうどチェックメイトですから」

 

 いつのまにか俺のキングが逃げ場のないところまで追い詰められていた。

 

「また負けた! やはりレーネには敵わんな」

 

 レーネにチェスで勝ったことは一度もない。


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