表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達の(非)日常  作者:
一章 たぶん日常
7/8

7 ある日のこと3

地下に続く階段は螺旋状になっていて、とても深い。


「ねえ凛人。これ、私達のことどう説明する?」


「……戻った時にここに来た記憶ごと消してしまえばいいんじゃないか……? こんな姿見られてこれからずっとそういう目で見られるのもあんまり良くは思わないし、、」


「そうだね、うん。そうしよう」


記憶を消すのは神様にしてもらって、、

神様記憶消すの出来たかな。たぶん出来たよね。神様だもん。


にしても埃臭いなー。どこまで続くんだ? この階段。


とんとんと歩くのが嫌になり、浮く魔法を久しぶりに使おうかなと考えたところで、ようやく明かりが見えてきた。

ガキンっガキンっと剣を合わす鈍い音までする。



一気に視界が広くなって、思わず眩しさに目を細めると、、そこには力尽きて体が動かせないクラスメート達と黒と戦っている田中くんの姿があった。


倒れた皆は私達のことに気がついたらしい。

うん、ちょっとまってね。

私そんなすぐにこの状況が理解できるわけじゃないからね。

頭をフル回転させていると、先に状況が読み込めた凛人が黒を蹴り倒す。



「はっ?? 凛人? おまっ、どうしてこんなところにいるんだ? 神楽さんも……、ていうかその服……」


「分かった。それ以上言うとしばくぞ」


凛人……、そんなに服に触れられるのが嫌なのか。


「綾ちゃん……。どうしてここにいるの? それにあのフードの人達はどうなったの?」


クラスで一番中のいい沙羅ちゃんが弱々しく尋ねてきた。

とりあえずここにいるのみんなに軽く治癒魔法かけておくか。


「うん。フードの人達は凛人が全員縛ったからもう大丈夫だよ。ここは、、どことも言えないけどもうすぐ日本に帰れるから安心してね」


私の言葉を聞き、沙羅ちゃんだけでなく他の人もホッとしたような顔を見せた。

でもこのまま帰っても全身傷だらけで逆に先生や警察たちにも聞かれる気がする。それはとてつもなく面倒くさい……。


「凛人、、ここ、ベルドア国だよね、前世私達がいた。ティアラ、まだいるかな……」


「わからないけど、、この状態で帰ったら逆にめんどうだよな。……ダメ元で行ってみるか」


ティアラは前世の私と凛人の娘だ。あの子が成人してすぐ私達が死んじゃったから、日本とここの時間があっていればまだ生きているはずなんだけど……。


凛人と一緒に転移陣を組む。この人数だと流石に一人では無理だからね。場所は……王城の前でいいか。


「みんな、今から一回安全なところにいくからちょっと我慢しててね。揺れるよ」


「なあ、これってどういう……」



「「移」」



また景色が変わる。

田中くん、なんか言ってた? まあいいか。


移動した場所は地下と違って人通りが多い。そのくせ私達は変な格好で、なおかつみんなかろうじて立てているボロボロの状態だから余計不審に見えるだろう。チラチラと見られている。


そして案の定、門番に止められた。そしてその顔には見覚えがあった。


「誰だ貴様らは!! ここはベルドア国の王城だ!! お前たちは……」


「ラフィ!!」


見たことのある顔に思わず抱きつき、凛人に引っ剥がされる。


「誰だ、貴様は……。俺はお前のことなど知りもしないが……」


「私よ、ラフィ。ディアナよ。こっちはクロムハルト。覚えてる?」


が、やはり外見は全く違うため、信じてくれない。

彼は真面目だったからなあ。少し白髪が増えたかな?


「何を言っているんだ!! ディアナ様とクロムハルト様は……18年前に亡くなられたのだ!! あの方々の名を勝手に名乗るなど……万死に値するぞ」


そして私達をよく慕ってくれていた。

思い出すだけで泣けてくる……。



「何事ですか」


凛とした声にはっとラフィが振り返る。田中くんたちもだ。そして、、この声も聞き覚えがある。私が知っている声よりも少し大人びているけど。


「ティアラ!!」


ティアラは驚き、そしてボロボロと涙をこぼし始めた。

すぐに駆け寄り、そっとティアラを抱く。凛人もティアラの頭を懐かしむように撫でていた。


「大丈夫? 騒がしくして申し訳ないわ。そして来たすぐで悪いのだけれどこの子達の傷を直してほしいの」


「おいっ!! 気安く女王様に触れるな!!」


ラフィは顔を赤くさせたり青くさせたりと大忙しだ。ラフィから見れば一般人にすぎない私が、こうして王族に触れていることが大問題なのだろう。


「ラフィ、まだわからないのですか。この方たちはお父様とお母様よ」


「なっ!? まさかそんな……」


「騎士の皆さん、今すぐこの者たちに手当を。そして部屋を用意しなさい」


「あ、ごめんね、ティアラ。どうしても今日中に帰らなきゃいけないから手当だけお願いするわ」


「……!! お母様とお父様も、帰られるのですか……?」


「……ええ、私達は、本当はもうこの世界にはいないから……」


「…………わかりました。ならば手当だけを」


はっ、っと揃った返事を返し、騎士達は田中君たちを連れて王城の中へ入っていった。

皆訳がわからないという目でこちらを見ているが……説明……はどうせ記憶消すからいいか。


「本当に、、ディアナ様とクロムハルト様なのですか……?」


「うん? そうだけど、今は綾と凛人っていう名前だよ」


「申し訳、、ございませんでした!! なんとお詫びを申し上げたらいいか……ディアナ様達だと気づけなかっただけでも私の命で足りるかと考えていたのに、、あんな言葉使いで喋ってしまうとは……!!」


ラフィは外にも関わらず、頭を強く地面にうちつけ、土下座状態になっている。


「き、気にしないで。この姿でわかる方が奇跡なんだから!! ほら、凛人……クロムも気にしてないから!!」


「そうだぞ。今の俺らはただの平民だ。立場で行ったらお前のほうが上だよ?」


しかしラフィは顔を上げない。


「ラフィ、こんなことでお母様達を困らせてどうするのですか? それにあまり時間がないのに私がお母様達に話す時間が少なくなるじゃないの」


「も、申し訳ございません!!」


ガバっと顔を上げ、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。



ティアラが城の前に来ていた理由は何やら懐かしい気配がしたから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ