第5話
「お疲れ、右京。さっきの戦闘は良い感じだったな。」
マックス達パーティーは、モンスターと戦闘を終えた直後。
中々に強敵だった為、全員が少し疲れていた。
右京も当然、汗を流し、肩で息をして、刀を杖代わりに体を支えていた。
そんな右京にマックスは声をかけながら汗を拭くためのタオルを渡す。
「マックス。ありがとさん。」
「お、おう。少し休憩しようか。」
若者言葉を意識しなくなって、右京は急速におっさんを隠せなくなっていた。
しかし、ツッコんだら負けだ。元に戻ってしまう。
マックスがなんとか飲み込んでいると、珍しく右京から質問された。
「なぁ、マックス。前から思っていたのだが、戦闘終わりに渡されるこの茶色のタオルって、いつも同じ物なんじゃないか?
マックスが今自分で使ってるのは白だろ?今まで白のタオル渡されたことが無い気がしてな。
それに、マックスだけじゃなく、他の皆からも茶色のタオルを渡されるのだが……?」
本当に珍しく右京が鋭い疑問を投げかけてきた。
マックス、シャルル、ゆき、ミクは言葉を発せず、視線だけで瞬時に会話した。
『マックス。貴方が言いなさいよ!リーダーでしょ?』
『無理だ!言える訳ないじゃないか!』
『なんて言ったら良いのでしょうね。』
『んー。ボクは別に気にしてないけどね。』
『ミク!お前、裏切んなよ。』
『とても難しい問題だわ。確かに正直には言えないわね。
右京がタオルで顔を拭く時、耳の裏まで念入りに拭いてしまうから、私達は同じタオルを使いたくない……なんて無理ね。』
『このゲームは匂いが実装されていませんから、加齢臭は大丈夫ですよ?……とも言えませんね。』
『んー。皆、気にしすぎだよ。見た目はチョーイケメンだから、別に良くない?』
『中身は完全におっさんなんだぞ?』
『でも、右京さんはとても優しくて良い人ですからね。』
『ええ。だからこそ本人には絶対言えないわ。マックス。なんとかしなさい!』
『はぁ……。結局、俺かよ。』
『頑張って!リーダー。』
というやり取りを、視線だけで、本当に極僅かな時間で、マックス達はやり終えた。
「なぁ、右京。俺達は右京が頑張っている事を何よりも近くで見ているし、知っているんだ。
だから、その頑張りを労う為にも、俺達は全員右京専用のタオルを持っているのさ。」
「そうなのか!すまん。知らなかったよ。
なら、俺も皆の分のタオルを持った方が良さそうだな。」
「そうだわ!この際、全員の色を決めて、それをそれぞれが持ちましょうよ。」
「良い案ですね!是非そうしましょう。」
「ボクも良いよー!」
こうして、右京以外も、専用の色の着いたタオルを決めて、全員がそれぞれ持つことになった。
しかし、体力差の問題で、戦闘後に右京が皆へそれぞれのタオルを渡すことは無かった。
コメディーのつもりだったのですが、
何故かとてもとても悲しいお話になった気がします。
なので、残酷な描写ありにしています。