第2話
あれから右京は若者っぽい言葉を使わなくなった。
使いこなせないと思い至ったのだと言った方が正確かもしれない。
だけど、右京のおっさん疑惑はソレだけではなかった。
「なぁ、右京。右京が侍スキルの【竜巻斬り】を使う時なんだが……。」
いつもの酒場で冒険終わりの談笑会。
マックスは右京へ戦闘中に気になったことを聞いた。
【竜巻斬り】とは、空中に飛び上がり横回転しながら何度も斬りかかる侍の攻撃スキルだ。
「使う時に叫ぶアレなんだが……。」
「うん?ああ。叫ばない方が良かったか?」
「いや、そんなことはない。無言でスキルを使われると連携もしにくいからな。とても助かっているさ。だけど、【竜巻斬り】で良くないか?」
「そうか?どうせならカッコイイ方が良いだろ?」
「そうかもしれない……そうかもしれないけれど……。
違うんだ、右京。それじゃ……アレじゃ、おっさんだと言っているようなものなんだ!」
マックスは悲痛に絞り出すように否定した。
「そうね。確か、ぜつ……」
マックスの代わりにシャルが右京のセリフを思い出しながら口にするも、右京が言い直した。
「【絶・天狼○刀牙】だ。」
「……それな。気になって調べたんだ。その技名に元ネタあるんだな。」
「おお!マックスも読んだのか?」
「ああ。あの漫画な……俺、産まれてすらいなかった……。」
マックスは衝撃の事実を伝えた。
「マックスから聞いたわ。私もよ。」
「フフッ。私もです。」
「ボクの両親も知らなかったよ。」
シャルル、ゆき、ミクも続いた。
「なぁ、右京。何故、それを選んだ?もう少し最近のでも良くなかったか?
いや、確かにカッコイイし、漫画も面白かったのだが……ちょっと……古過ぎる。」
「……あっ!俺も親の影響なんだ。」
右京は至極真っ当な理由を言うが、『あっ!』と言ってしまっている。恐らくミクの発言からヒントを得たのがバレバレだった。
「回転方向が違うのはイイけど……ウキョの竜巻斬りは一、二回転ぐらいしかしてないよ?」
「フフッ。使用後も毎回ふらついてますよね。」
「三半規管が衰えている!」
その後も右京はフルボッコだったが、最後までおっさん疑惑は否定した。