第9話 墓地
ダリオたちがシルヴァに付いて行って到着した場所は街の外れにある墓地だった。
「何でこんなところに来るんだよ」
「死体のゴーレムだって言ったでしょう? それにアーティさんの話だとこの墓地から死体が幾つか消えているみたいなんです」
「うげ……」
ダリオは犯人が死体を掘り起こしている姿を想像してしまった。それを横目にシルヴァが墓地を調べ始める。
「うーん、整地されていて、どこの墓が暴かれたのか分かりませんね……」
「墓地の管理人がいるだろ、そいつに聞いたらどうだ?」
ミラジェンの言葉がシルヴァの頭に響く。
「あ、そうだねミラくん。でも何処かなあ」
シルヴァが何処かに書いていないか探していると、マーガレットが入り口近くの看板を指さして言った。
「これじゃないですか?」
シルヴァがその看板をのぞき込むと、そこにはこの墓地から少し歩いた先に管理人の家があると記されていた。
「ああ、これですこれです! ありがとう、マーガレットさん!」
シルヴァはマーガレットの手を取って喜びを伝える。
「い、いえ……たまたま、以前来た時にこの辺りにあったのを覚えていただけなので」
「おい、場所は分かったんだろ、さっさと行くぞ」
ダリオが急かす。
「ごめんなさい、ダリオさん。こっちみたいですよ」
シルヴァが先導して管理人の家に向かう。
「ここみたいですよ」
シルヴァが1軒の家を指さして言う。
「ようやく着いたか。全くここの管理人はこんな所から通っているのか?」
「そんなに歩いていないじゃないですか」
「そうだよ、ダリオは体力無さすぎ」
ダリオはモニカに突っかかる。
「お前は俺の奴隷だろ? なんだその口は。ご主人様かダリオさんだろ?」
「敬語を使いたくない相手っているよね」
喧嘩をするダリオとモニカを見てマーガレットが慌てる。シルヴァはそんな様子を見て、ニコニコと笑っている。
「何で笑っているんですか、シルヴァさん」
「あの2人はたぶん、あれでいいんですよ。喧嘩をして仲良くなるんだと思います」
「で、でも……」
「あ、そうですね、今は管理人さんのところに行かないと。おーい2人とも、行きますよー」
シルヴァが手を振る。それを見て2人は喧嘩を止める。
「そ、そうだな。俺がこんな子供相手に本気で怒る訳がないからな」
「うんうん。誰がダリオなんかと」
シルヴァが2人を指さして小声で言う。
「ね? 仲が良いでしょう?」
ニコニコとした顔のままシルヴァは管理人の家の扉をノックする。管理人らしき人物の気配が扉の向こうからすると真面目な顔に戻った。
「何だあ? こんな時間に」
扉が開くと、中年の男性が1人神妙な面持ちで顔を出した。
「あなたが墓地の管理人ですか? 墓地から死体が消えている件について話を聞きたいのですが」
「ああ、あれか。確かに困っている。2カ月ほど前だったかな。いつものように墓地へ行くと、無縁墓地の辺りが荒らされているじゃないか。しかも棺桶を開けられて死体が無くなっている。衛兵たちには話したさ。だがな、あいつらちょっと調べただけで手がかりが少ないとか言って後は何もしないんだ」
「……無縁墓地?」
シルヴァは少し考えるような素振りを見せる。
「ああ、無縁墓地だ。しかも冒険者の死体ばかりが無くなっているんだ」
「なるほど」
「おい、どういうことだよ」
後ろで聞き耳を立てていたダリオが口をはさむ。
「より強いゴーレムを作るためにより強い死体を使いたいのでしょう。……恐らくは、ですけど」
「恐らく? はっきりしないな」
「冒険者でもない女性が襲われたのが気になって……。ゴーレムの出来栄えを確認するだけならば2、3度襲撃すれば済む話でしょう? それが襲われる事件が多発している。うーん、どうしてだろう?」
「あんたら、さっきからゴーレムとか何の話をしてるんだ?」
「ああ、すみません」
シルヴァは管理人にこれまでのことを話した。
「ううむ、許せんな。墓を暴くだけでなく、女の子を襲うとは」
「ま、まあ、そのために僕が来たのですから……」
「む? 来たと言えば、思い出したぞ。1週間前くらいか。アーティの奴が来たぞ」
「アーティさんが?」