第8話 ゴーレムとは
アーティの名を聞いたマーガレットは少し明るい表情になった。
「アーティさんが……?」
「何だ? マーガレット、あいつと知り合いなのか?」
それを聞いたマーガレットが少し、怒った顔を見せる。
「あいつだなんて言い方しないでください。あの人はお金も何もない私たちが怪我や病気をしたときに無償で診てくれるのですから」
「ご、ごめんマーガレット」
ダリオが慌てて謝る。それを見たマーガレットの表情から怒りが失せた。
「しかし、相手がゴーレムとなると厄介だぞ」
ダリオ以外の3人の頭にミラジェンの声が響く。
「ゴーレムが厄介なの?」
「うん。魔物の強さっていうのは内にある魔力の量で決まるんだけど……」
「大丈夫だって! こいつは昨日、強そうなデーモンだって倒したんだ。ゴーレムなんか簡単に……」
「ダリオさん、今その話をしていたところなんですけど」
ダリオは「ああ、すまんすまん」と言って黙る。
「話を続けるね。魔力ってのは万物に宿っていて僕らの体内やこの世界中にも溢れてるのは知っているよね?」
ダリオは知らなかったが、マーガレットの手前、知っているふりをして頷いた。
「昨日倒したデーモンは召喚した人がそんなに魔力を持っていない人間だったから、持っていた魔力も少なかったんだ」
「でも昨日の奴は道に大きな穴をあけてたぞ?」
「腕力はその限りとは限りませんからね。だから召喚する魔物がデーモンだったのでしょう。……あのまま召喚し続けていたら魔力を食われてあの人は死んでいたかも」
ダリオたちは青ざめた表情になる。
「それで、ゴーレムっていうのは土や石を動かすのに膨大な魔力を注いで作られるんだ。だから、そのぶん強い。それに、アーティさんの話によると、ここに出ているのは死体のゴーレムだから……」
「死体のゴーレム? 土や石と何が違うんだ?」
「死体というのは元々が生き物……自然物と比べて基本的には持っている魔力の量が多いんです。つまり、注がれた魔力と、もともと持っていた魔力でたくさんの魔力を持っているかもしれないんです」
「なるほど、それだけ強いから厄介なんですね?」
シルヴァはそう言ってきたマーガレットから視線を逸らす。
「いえ……本当に厄介なのは、ゴーレムという魔物は人が作らなければ生まれてこない魔物だって事です」
「それの何が厄介なの?」
「つまり、ゴーレムを倒しても元凶になる人をどうにかしないとまた現れる可能性が高い。僕たちは人を斬れないから」
「人が斬れない? でも昨日は……って、あ」
そういえば昨日の連中はグレーターデーモンがやられた事に驚いて勝手に逃げていた。確かにシルヴァは人には何もしていない。
「でも、何でだよ」
「これは、掟というか、そういった類のもので……。いえ、この話は後にしましょう。今はゴーレムを探さないと」
そう言ってシルヴァは歩き出す。慌ててダリオたちもついてゆく。
「おい、待てよ!」
「ダリオさん、危険かもしれないのでついてこない方が……」
「何言ってんだよ、ゴーレムが現れたらお前が居ないとどうしようもないだろ」
シルヴァは少し考えるそぶりを見せた後、頷いた。
「分かりましたダリオさん。一緒に行きましょう」