第4話 作戦
翌日、ダリオが二日酔いで痛む頭を抱えながら目を覚ますと、寝起きの頭で昨日のシルヴァという妙な少年について考えていた。
「いったい何なんだあいつは。変な奴だと思ったが、売られたのは俺のせいだってのに助けに来るって? お人よしってやつか?」
そう考えるも、お人よしだなんて言葉では言い表せないものも感じていた。だいたいあんな怪物を一撃で倒せるほど強かったのならなぜ自分に絡まれたときに抵抗しなかったのか。
「まあいい」
考えても仕方がないし、そもそも考えるのが億劫になったダリオは宿を出ると、今度はこれからどうするのかを悩んでいた。
モーリス商会が俺を狙うって事は狙いはこの白金貨10枚……。もとい昨日店で豪遊したから9枚と金貨99枚と銀貨以下が沢山。街を出るとしたら、最大の懸念はマーガレットちゃんに会えなくなるって事だ。折角大金が入って毎日店に通えると思ったのに、だ。だが、このまま街に残るとして金には困らないが命の危険が常について回ることになる。あのシルヴァとかいうガキがいつも守ってくれるのを期待できればそれでも良いのだが……。
「そうだ!」
金に物を言わせてマーガレットを身請けすればいい。今までこんな大金を手に入れた事など無かったためすぐには思いつかなかったが、一生遊んでも使い果たせないほどの金だ。金貨の数枚くらい飛んでも痛くはない。そうと決まればと早速昨日の店に向かう。
「待ってください……」
か細い声が聞こえてくる。この声はと振り向くと昨日の少年、シルヴァが目にクマを作って立っていた。
「なんだお前? そんなやつれた顔をして……」
「ええ、昨日眠れなかったので……。いや! それよりもダリオさん、女の子を買いに行くんですよね!」
「お、おいお前!」
ダリオは慌ててシルヴァを近くの路地裏に連れ込む。そんな事は朝から大声でいう事じゃない。だいたいこんな子供に言わせているように見られて周りの目が気になる。実際さっきすれ違った女はダリオを白い目で見ていた。
「ダ、ダリオさん、僕たちまた売られるんですか……?」
「いや、違う」
確かにこのままでは昨日の再現だ。ダリオは強引に話を変える事にした。
「で? 俺が女を買うから何だって?」
少し怒り気味に言う。
「ああ、そうです! 女の子を買うお金があるのならモーリス商会から1人、僕の友達を買ってほしいんです!」
「モーリス商会だァ!?」
モーリス商会と言ったら自分の金、ともすれば命も狙っているところじゃないか。
「ダメだダメだ! 近づいたら俺の命が危ない!」
「あ、それなら大丈夫ですよ! 僕とミラくんに考えがあります」
確かにマーガレットちゃんを買った後、身の回りの世話をしてくれる奴隷は欲しかった。だが危険を犯してまでモーリス商会で買う意味はない。
「やっぱり駄目ですか……?」
しょんぼりとするシルヴァを見てなぜか罪悪感のようなものを感じるダリオ。いや、そもそもこいつの機嫌を取らなければ命が危ないんじゃないか?
「わかったわかった! それで、何て名前の奴隷で、どんな考えがあるんだ?」
シルヴァの顔が明るくなる。……クマはそのままだが。
「モニカって女の子です。それで、考えというのはですね……」