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第3話 デーモン

「おい、シルヴァ、起きろ」

「うーん、何? ミラくん……」


 眠気を堪えて答える。


「今、あのモーリスとか言うやつの声を聴いた。お前を売った男がこれから襲われる」

「え!? いったいどうして?」

「金が惜しくなったらしい。あいつの手の者がすぐに男の元へ向かうようだぞ」


 シルヴァは飛び起きた。近くで眠っていたモニカが目を覚ます。


「いったいどうしたの?」

「ごめんモニカさん。僕、行かなきゃ」

「行くって……」

「説明は後でするよ。ミラくん、すぐに来れる?」

「当然だ」


 風を切るような音と破壊音、すると奴隷部屋のドアを突き破って1本の大剣、ミラジェンが飛んできた。シルヴァはミラジェンを手に取ると、被られたドアの方へ駆け出す。


「行くよ、ミラくん!」

「相手が人間だったらどうする?」

「その時はその時!」


 奴隷部屋を出ると、突然飛んできたものに驚いて腰を抜かしている見張りの男と目が合う。


「お、おい! お前……」

「ごめん! 今は急いでる!」


 見張りはシルヴァの顔と手に持った剣を見て驚く。その横をシルヴァは駆ける。


「無視は良くないんじゃなかったか?」

「もう! ひどいなミラくん。 今は優先することがあるでしょ!」


 そのまま廊下を駆け抜け、モーリス商会を出る。


「あの人は何処に居るか分かる?」

「少し待て。ああ、向こうにある店を丁度出たところだ」


 柄が少し動き、道を示す。シルヴァはすぐに駆け出した。しばらく進むと、数人の男たちに襲われるシルヴァを売った男がいた。男はひどく酔っているらしく、千鳥足だ。


「ヒック! な、なんだ? お前たち。金ならやらんぞ」

「これは都合がいい。楽に仕事がこなせそうだ」


 リーダー格の男が剣を抜くと、男に向かって振り下ろされる。


「うわああああっ」


 男は思わず腕で顔を守ろうとする。ガキン!という固いものに当たる音がして目を開けると、シルヴァが大剣を盾のようにして男を守っていた。


「お、お前……」

「ごめんなさい、遅くなって。大丈夫でした?」

「あ、ああ……」


 リーダー格の男は目を見開く。


「まさか竜骨の大剣の使い手が来るとは、おい! あれを出せ」

「でも、こんな街中で……」

「使い手は強い。俺たちの誰も歯が立たないだろう。それに何かあったらモーリスの野郎の責任にすればいい」


 それを聞いた男たちの1人が懐から大きな水晶のような石を取り出す。


「召喚石だ!」


 シルヴァの頭にミラジェンの声が響く。


 男は召喚石を掲げると、何かの呪文のような言葉を紡ぐ。すると、光とともに牛の頭をして4本の腕を持った大きな怪物が姿を現した。


「行け! グレーターデーモン! あの男と子供を殺せ!」


 グレーターデーモンは命令を聞くと、シルヴァ達へ腕を振り下ろす。だが、それを予知していたかのようにシルヴァが男を抱えて、その攻撃を避ける。振り下ろされた腕は道に大きな穴を開けた。


「お兄さん、下がってて」

「お、おい……」


 シルヴァはグレーターデーモンの方へ向き直ると、突撃してくるデーモンへ大剣を振り下ろした。鈍い音と共にグレーターデーモンは倒れる。シルヴァが剣を振り下ろした先は、斬られたような跡でなく、潰された様になっていた。


「そんな! グレーターデーモンが一撃で!」


 男たちは驚き、慌てて逃げだす。そこには頭を潰されたグレーターデーモンの死体と、男とシルヴァそしてミラジェンが残された。


「怪我はないですか?」


 驚いている男にシルヴァが手を差し伸べる。


「あ、ああ……。と言うかお前、どうして此処に!」

「お兄さんを助けに来たんですよって、酔っ払ってるんですか?」


 シルヴァが答える。すると、ミラジェンの声が彼の頭に響く。


「宿にでも連れて行った方が良いだろうな」

「そうだね、ミラくん。じゃあお兄さん、どこか宿で休んでください。僕は近くでお兄さんを守ります。って酔っ払ってるから、僕が連れて行った方がいいか」


 男を連れて宿場街へ向かった。到着すると、一軒の古びた宿の前で立ち止まった。


「ここが良いみたい」

「でも向こうの高級宿の方が……」

「ダメです。向こうのはお兄さんを襲った人たちに通じてるみたいなので」

「うげ……」


 いくらこの少年が守ってくれると言ってもまた襲われるのは勘弁したかった。男は宿に入ると、2人部屋を取ろうと言おうとするが、少年が付いてきていない事に気がついてすぐに宿を出た。


「お前は泊まらないのか?」

「ええ、ミラくんが僕は別の宿を取った方が良いって」


 酔っ払っていて理由を聞くのが面倒になっていた男はそのまま宿に戻ろうとしたが、大事なことを聞いていないことに気が付き振る。


「お前、名前は?」

「シルヴァです。そして、こっちがミラジェンくん。そうだ、お兄さんの名前も聞かせて」

「あ、ああ。ダリオだ」

「じゃあ、ダリオさん、また明日」

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