第2話 商会
モーリス商会は日用品から嗜好品、高級品や奴隷までありとあらゆるものを取り扱う大商会だ。男は剣のこともあり、ここならば少年と剣どちらも売れるだろうと考えてやってきた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
「売却だ。この剣とそこのガキを売りたい」
「ではまず剣の方の鑑定から……こ、これは! ……少々お待ちください」
商会の者は鞘から少し抜き剣身を見ると、驚いた顔をした後に男に剣を渡すと奥に引っ込んでしまった。
「これは本当に本物かもしれない」
半信半疑だった男も今の反応を見て疑惑が確信に変わってゆく。そしてしばらく待つと、奥の方から上等な服を着た男が現れた。
「これはこれは、竜骨の大剣と、奴隷の売却ということで。どうぞ此方へ」
男は奥の方へ案内される。少し進んだ先に高級そうなソファやテーブル等が置かれた応接室らしき部屋に案内された。
「自己紹介が遅れました。私はモーリス。この商会の会長をしております。その大剣ですが、如何にして手に入れたのかはあえて聞きません。そうですね、大剣だけで白金貨1枚でどうでしょう?」
「白金貨!?」
白金貨と言ったら、女の子と遊べるどころか一生通い詰めてもお釣りが余裕で来る。
「ええ、竜の素材の武器は希少な物なので。次はそちらの子供ですね」
「ああ、こいつはその剣が使えるらしい」
「なんと、使い手ですか!?」
モーリスは先ほどの商会の男よりも驚いた顔をする。
「使い手となると、剣とその子供、合わせて白金貨10枚でどうでしょう!」
「10枚! ……いいだろう。売った!」
「ありがとうございます。白金貨はすぐに用意させますので……。おい、用意を!」
モーリスは強い口調で、近くにいた商会の男に伝える。10数分ほどすると、白金貨が運ばれてきた。
「これが売却金です。本日は誠に有難う御座いました」
男はホクホク顔で商会を出る。一方、少年はと言うと商会の者に連れられ奴隷部屋に連れ込まれた。
「剣と使い手は別にして下さいね、特に剣は厳重に保管するように!」
「え? 待って下さい! ミラくんと離さないで!」
少年はモーリスに抗議する。
「君と剣を一緒にすると逃げられそうな時に誰にも止められませんからね、別々にさせてもらいますよ」
「そんな! ん? ミラくん? うんうん。……わかったよ」
「どうやら理解したみたいですね」
奴隷部屋のドアが閉められる。少年が中を見回すと、老若男女、種族も問わず様々な人たちがいた。少年は自分より少し年下くらいの獣人の少女を見つけ、隣に腰掛けた。
「なんでそんなにニコニコしてるの」
少女に言われて少年は自分が笑ってる事に気がついた。
「ミラくんが心配ないって言ったからね」
「ミラくん?」
「あ、ミラくんって言うのはね、うーんと、あ、大丈夫? なら……」
少女は急に自分以外の者と話すような口調で話し始めた少年を見て引き気味になるも、突然頭に声が響いて驚く。
「俺がミラジェンだ。こいつはミラくんなんて呼ぶがな」
「だ……誰!?」
「誰って、ミラくんだよ」
「おいおい、それじゃ分からないだろ。俺は竜骨の大剣、ミラジェン。こいつのまあ、相棒のようなものだ」
「竜骨の……」
少女は祖母から聞いた事があった。かつて、闇を照らす者と呼ばれた勇者達は、竜の身体から造られた武器を手に、強力な魔物達と戦ったと。
「じゃあ、貴方が、闇を照らす者?」
「その呼ばれ方は久しぶりだな」
少年ははにかんだような顔を見せる。
「こいつは自覚はあるんだが、行動が行き当たりばったりでな、俺が居ないとどうしようもない。今回もあんな奴は無視して逃げれば良いものを」
「でも無視するのは良くない事だし……」
「面白い人……」
奴隷に身を落として、先行きに不安を感じていた少女は少年を見て思わず笑顔になる。
「私はモニカ。貴方の名前は?」
「僕? 僕はシルヴァ」
「女の子みたいな名前だね」
「よく言われる」
それから2人は、夜になるまで談笑を楽しんだ。
とりあえず投稿のテストで書き溜めてあった2話目も上げます。