98.赤い山猫
帝都にて、俺は同盟国の神聖皇国の聖騎士リューウェンから、相棒の捜索を頼まれた。
リューウェンと手分けして帝都を探すことにした。
時限を決めて、いったん散会。
「フェリサは俺についてくるのか」
「…………」こくこく。
無口で可愛い我が妹が、俺の腕にしがみつきながらうなずく。
正直手分けした方が、効率が良いとは思う。
とはいえ、彼女は人外魔境の広い大地になれてるせいで、こうした人の多い場所に慣れていない。
そこに一人にしたら、多分迷子になってしまうだろうし、彼女は嫌がるだろう。
だから、俺はフェリサと一緒に回ることにした。
「しかし野良猫みたいな女の子か。どんな子なんだろうな」
「…………」うーん。
わかりませんね、とばかりにフェリサが両手を横に広げて首を振る。まあそうか。
「どうやらその子は都会に来るのが初めてらしい。となると、初めての都会に戸惑っているだろう。フェリサ、そんな感じの音を拾ってくれ」
「…………」ぐっ。
フェリサが俺の肩の上に、するすると乗っかる。
肩車の態勢だ。
正直人が多いので目立つことはしたくないのだが……。
「フェリサ、普通にできないのか?」
「…………」のー!
腕でバッテンを作るフェリサ。
肩車じゃなきゃ駄目みたいだ。こだわり?
俺も確かに目がいいが、フェリサの耳の方が、【多くの物から聞き分ける】力に長けている。
ややあって、フェリサが→斜め前を指さした。
「見つけたか?」
「…………」こくん。
「よし、降りてくれ」
「…………」のー!
……どうやらこのままの態勢らしい。目立つから降りて欲しいんだが……。
「…………」のーのー!
「はいはい、わかったよ」
「…………」むふー!
ご満悦の妹を肩車したまま、フェリサの指さす先へ向かうと……。
「なんじゃ! 貴様わしに指図するのか!?」
小柄な、赤髪の女の子がいた。
白い制服にスカート、そして胸の紋章から、リューウェンのおっさんと同じ聖騎士だとわかる。
だが……その、なんというか……。
体中傷だらけで、目がつり上がってて、ふーふーと興奮気味に呼吸を繰り返している様は……。
「山猫だな」
「…………」それな。
リューウェンのバディは、山猫のような女の子で、帝都の店先で問題を起こしてるようだった。