97.迷い猫探し
神聖皇国から来たおっさん、リューウェン。
彼は俺と同じ、今回の生誕祭に参加する予定とのこと。
「拙僧達は皇国の守護騎士、【聖騎士】と呼ばれる存在なのでござるよ」
「聖騎士……。達ってことは、あんた以外もいるのか」
「うむ。拙僧らは【バディ】を組み行動することになっているのだが……ちと問題があってな」
「問題ってなんだ?」
「拙僧のバディが行方不明でござる」
迷子ってことか。
帝都は王都と比べて狭いが、しかし人が多いからな。
慣れてない人が来ると迷子になる。
どうするか、なんて考えるまでもない。
「探すの手伝うよ」
「おお! ……しかし、よろしいのか? 貴君らはどこかへ向かっている途中では?」
「あんたと一緒で訓練に行く途中だよ。あんたは一緒に護衛する仲間だ。仲間が困っていたら助けるもんだろ?」
軍に、胡桃隊に入って俺はそれを知った。仲間との絆が、窮地を救ってくれることがあるって。
だから、仲間が困ってるなら助けたいと思う。
「貴君はすばらしい御仁であるな!」
「…………」こくこく、えっへん。
俺の後ろでぼーっとつったっていたフェリサが、どや顔でうなずく。
「俺は目がよくて、妹は耳が良い。捜し物にはぴったりな兄妹だろ?」
「それはなんと! 神の思し召しであろうな! いやあ、普段から徳は詰んでおくものだ!」
「で、特徴は?」
うむ、とリューウェンはうなずいて、バディの特徴を告げてくる。
「まあ強いて言えば……」
「言えば?」
「野良猫、でござるかな」
「はぁ……野良猫?」
バディじゃなかったのかよ……。
「あいや、野良猫のようなということでござる。赤毛で、気性が荒く、すぐに人にかみつくようなおなごでござる」
つまりフェリサとは正反対の女の子ってことか。
「おっけー。わかった。フェリサ、探すの手伝うぞ。いいな?」
「…………」どんっ。
任せとけ! とばかりにフェリサが自分の胸を叩いたのだった。