96.神聖皇国、聖騎士【リューウェン】
俺が訓練所へと向かう途中、木下で泣いてる女の子がいた。
声をかけようとすると、はげたゴツいおっさんもまた、女の子に声をかけようとしていた。
デカい……。種族は人間だろうが、2メートル近くある。
白い布の服で、体をすっぽり覆っている。
だがそんなふわっとした服装からでもわかるくらい、その肉体が鍛えられてることがわかった。
糸目で、はげてて、なんだか神秘的な雰囲気を纏っている。
「これは失礼。あなたはこの子の兄かな?」
「あ、いや違うけど」
なるほど、とおっさんはうなずくと、しゃがみ込んで女の子に問う。
「おぬし、どうかしたのか?」
「うぐ……ふーせんがぁ……」
見上げると、街路樹の枝に風船がひっかかっていた。
女の子の身長からすると、全然届かない場所にある。
「なるほど、では拙僧が取ってあげよう。よっと」
おっさんが手を伸ばす。
デカい……。
風船の糸がからまっている枝に、手が届く。
「む? 糸がからんでてなかなか……」
おっさんも手を上げてる、無理な体勢をしているからか、なかなか取れないらしい。
俺は財布からコインを取り出して、指で弾く。
高速で飛翔したコインが、風船の糸に絡みつく。
その回転でからまっていた糸がほどけた。
おっさんは風船を少女に渡す。
「お、取れたぞ。ほら」
「わぁ……! おじさん、ありがとうー!」
「お礼ならそこの少年にも言いいなさい」
「え? でも……おにいちゃん何かした……?」
コインを指で弾いて飛ばした。
この一連の動作は、ほぼ一瞬で行われたことなので、常人では目で追えないはず。
「ああ。彼がコインを飛ばして、風船を取ってくれたのだ。あの少年がいなければ、取れなかったのだよ」
「へえー……ありがとう!」
気恥ずかしくて俺はどもりながら、「いえいえ」と言った。
女の子は俺たちに頭を下げて、どこかへと走り去っていく。
「いやぁ、見事な狙撃でござった。枝を狙うのではなく、あの細い糸を狙うなんて、なかなかできることではありませぬぞ!」
「は、はあ……どうも」
ばしばし、とおっさんが俺の背中を叩いてくる。
なんなんだろうか、このおっさん。
「む? その軍服……もしやマデューカス帝国の軍人でござるか?」
「ああ。そうだけど、どうした?」
「拙僧は軍の詰め所に向かって居ている途中だったのだが、迷ってしまってな。よければ連れて行ってほしいのだが」
「別にいいけど……軍に何のよう?」
「拙僧もまた、訓練に参加するのでござるよ」
おっさんがにこやかに笑って言う。
「今日より合同訓練に参加する、神聖皇国【13使徒】がひとり、【リューウェン】と申す」
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