94.兄妹
俺が寮の風呂に入ってると、妹が乱入してきた。
さも当然のように、俺の膝の間に居座る。
しかも当然のように全裸で……。
「おまえな……」
「…………?」
「いちおう、おまえもお年頃なわけですが?」
「…………?」
それが何かとばかりに、堂々と裸身をさらしてくる。
俺としては、少し見ない間にちょっぴり成長した胸の膨らみに、どぎまぎというか……気まずさを覚える。
と、同時に妹成長したんだなぁって、そんなことを思ってしまう。
「おまえは恥ずかしくないのか?」
「………………」
ぽかんとしたあと、
「…………」いやん。
としなを作って見せた。なるほど、恥ずかしくないようだ。まあまだ妹はお子ちゃまだからな。
そう思うとなんだかほほえましくて、ほっとする。いつもの日常が帰ってきたみたいで、少し肩が軽くなる。
「…………?」
どうしたの、と目でうったえてくる。妹はしゃべらないが、しかし無口ではない。
しゃべるのが苦手なだけなのだ。
……しかし、どうしたって聞かれて、さてどうしよう。
まあ、相手は家族だし、言っても良いか。
隊のみんなや、メイベルと比べて、言いやすいし。
「実は、俺の目……魔蟲族の目なんだって」
「…………!」
な、なんだってー! とばかりに目を剥く。
だが……。
「……?」
だから、とばかりに首をかしげられた。
「いや、だから……あー……」
……そうだ。だからどうした。
俺の目が、魔蟲族の目だからって、俺が人間であることには変わらないじゃないか。
妹が無防備に背中を預けてくる。
そして、にぱっと笑う。
……そうだよ。体の一部がどうであれ、俺は俺、ガンマ・スナイプじゃないか。
「ありがとな、フェリサ。大事なこと、思い出させてくれて」
「……? ……!」
ぐっ、とフェリサが親指を立てる。
ほんと、家族っていいよな。どんなときでも、【いつもの自分】に戻してくれる。