92.ガンマの目
リヒター隊長のもとで、新しい武装をもらい、試し打ちしている。
オスカー、シャーロット副隊長とつづいて、最後に……俺の番。
「ガンマ君。君は当分、おじいさんからもらったあの弓……魔蟲弓を使うことを禁止します」
……禁止。使っちゃいけないだって……?
「そんな……どうして? あれは、本当に良い弓なんですけど?」
じーちゃんからもらった、新しい弓。
アレを使ったとき、俺は凄まじい万能感に包まれた。
それこそ、超高速で飛翔する毒蛾を木っ端みじんにするほどに。
しかも俺の全力全開の一撃、【破邪顕正閃】を連続ではなっても壊れなかった。
アレを使っちゃいけないなんて……どうしてだ?
いやでも……イジワルで言うような人じゃないだろう。多分何らかの理由があるんだ。
「ガンマ君。魔蟲弓は非常に危険です。デメリットが存在します」
「デメリット……?」
ちら、とリヒター隊長は、オスカー達を見やる。
彼らは試し打ちをやめ、俺たちの話に耳を貸してる。
「ハッキリ言いましょう。あれは、君を人外の化け物にする可能性があります」
「なっ!? なんだねそれは!!!」
俺が声を上げる前に、オスカーがリヒター隊長に食ってかかる。
「魔蟲弓はガンマ君と深く接続し、君の身体の中の【魔蟲】の力を増幅する危険性があるんです」
「……ガンマさんの、魔蟲の力?」
シャーロット副隊長が、不安げに俺を見てくる。
俺も……そのワードに不穏な物をおぼえた。
「ガンマ君。まえに、君の目は特別だと言いましたね」
「あ、そう言えば……そうですね」
俺の目は遥か遠くにあるものを視認でき、またどれだけ小さくても、見分けることができる。
特別な……狩人の目だと。
「違います。君の目は……狩人の目じゃないんです。君のその両目は……」
彼女は俺に告げる。
「魔蟲族の目、なんですよ」