84.合同訓練
翌日、目覚めるとオスカーもマリク隊長もいなかった。
軍服に着替えて、帝城へと向かう。
「「あ……」」
入り口付近で、メイベルと鉢合わせた。
「お、おっす!」
「お、おう……」
メイベルが俺の肩を気安く叩く。
前はあんまり気にしなかったが……どうしても、ボディタッチされるとその部分を熱く感じる。
「えっと……いこっか」
「そうな」
互いに無言になりながら歩いて行く。
気まずさはあるんだが、別に嫌じゃない。
朝、ただ彼女と会えただけなのに、きょうはなんだか仕事を頑張れるような、そんな気分になれる。
ほどなくして、俺が詰め所へ行くと……。
「……メイベル」
「あ! お姉ちゃん!」
メイベルの姉、アイリス・アッカーマンが胡桃隊の詰め所に顔を出していたのだ。
妹とよく似た赤い髪、だが鋭い目つきは猛禽類を彷彿とさせる。
「どうしてアイリス隊長がここに?」
「……なんだ、マリクから聞いてないのか?」
「何をです?」
「……生誕祭に向けて、軍合同での訓練が行われるそうだぞ」
「合同訓練……ですか?」
ちょうどそこへ……。
「よぉ、おめーら。おはよーさん」
「ひひ、ごきげんよぉ~」
リヒター隊長とともに、うちの隊の隊長、マリク・ウォールナットがあらわれる。
「隊長、合同訓練ってまじですか?」
「ああ。生誕祭は人が多く来るからな。よそからやばいやつが来ても対処できるよう、訓練しようってことで皇帝陛下が」
「へ、へえ……」
そうか……帝国にかなりの人が来るってことは、仕事が忙しくなるってことだよな。
そうなると、デートなんてしてる暇無いんじゃ……。
そんな俺たちを見て、にやっとマリクが笑う。
「安心しろ。交代で休めるようシフトは組んであっから。デートのあるやつは、心配しなくていーぜ」
良かった……と俺は安堵の息をつく。メイベルも同じタイミングで息をついていて、なんとなく、笑ってしまった。