82.キッスはするんかい?
「ところでキッスはするのかい?」
……俺の部屋にて、胡桃隊のあほ2名と一緒に快気祝いをしている。
オスカーがふと、そんなことを言ってきた。
「ばか……?」
「馬鹿とは失礼だね! ガンマ、君はメイベルをどう思ってるのかね!」
こいつ酔ってるな……
どう思ってるだって? そんなの……そんなの……。
「……どう思ってるのかね」
彼女を見ているだけでドキドキするし、彼女のために何かしてあげたいって無条件に思う。
この感情の正体については……わからないでいる。
「そんな君に、このおっさんが答えてあげましょー!」
こちらも酔っ払ってるおっさんリス、マリク隊長が答える。
「それは……メイベルに惚れてるってことだ! つまり、好きってぇことだ!」
「そのとおり! 隊長!」
「なんだオスカー!」
「こいつを射殺する許可を!」
「許す!」
許す、じゃねえよ……まったくあほ2名が。
酔ったオスカーが飛びかかってきたので、それを見切って俺が除ける。
「なんだいなんだい! 自分だけ青春しちゃってさ! ボクなんてもてたことないのに、きぃ!」
「おれだってこの体になってから、ちやほやはされるけど、もてたことはないのに! きぃ!」
……ん? 今、なんか聞き捨てならないワードが聞こえてきたような気がする。
この体になってから?
「隊長。それって……」
「ちくしょぉお! 両思いかよぉおおおお! オスカー! やっちまえ!」
ばっ、とオスカーが近づいてきて、俺に関節技を決めてくる。
考えている一瞬の隙を突いてきたなこの野郎。
「てめえガンマ! うらやましすぎるんだよぉおおお! 女子チームからはもてて、血のつながらない義妹からももてて、ちくしょぉおおお!」
「いや、もててないから……」
「ちくしょぉおおお! すかした態度しやがってええ! また病院送りにしてやろうかぁあああああああ!」
……ほんとあほだなこいつ。
別にもてたことなんて一度も無いってのに。
それに……両思い?
「何を言ってるんだ。これは、俺の一方通行な思いで、向こうがどう思ってるかなんてわからないじゃないか」
「「うっせえ、モテ男!!!!!!!」」
何だよモテ男って……。