表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/242

71.驚異



 ガンマの上司マリク・ウォールナットは、今起きた現象を目撃した、ただ一人の人物だった。


「んだよ……今の……」


 魔法飛行機マナ・バードから見た。

 ガンマが、敵を仕留めるその姿を。


 空中から落下しているというのに、彼は敵を確実に仕留めるために矢を複数放った。

 そのどれもが、破邪顕正閃。


 以前は1発打つだけでガンマの膂力に耐えきれず、弓が崩壊していた。

 だが複数打っても、ガンマの新しい弓……魔蟲弓は壊れなかった。


 そして、最後に放った一撃。

 それはもう、レベルの違う攻撃だった。


 放たれた黒い閃光は、周囲にあった全てを飲み込んでいた。

 大地も空気も、あの矢に吸い込まれていた。


 超巨大毒蛾はガンマの新しい全力の一撃を受けて、消滅した。


「ガンマ……は! ガンマ!」


 魔法飛行機マナ・バードを操作して、ガンマの元へと急降下する。

 彼は矢を打った後……気絶していた。


 両手を広げて真っ逆さまに落ちていく。


「うぉおおおおおおおおおおおお!」


 地上が見えてくるタイミングで、なんとかガンマを回収することに成功。

 魔法飛行機マナ・バードの座席にぐったりともたれかかる。


「ったくよぉ……無茶しやがって……」


 気絶しながらもガンマは笑っていた。

 何かにとても満足してるような、そんな笑みだ。


「全エネルギーを使ったんだな……打った後に、おれが回収してくれるって信じてたのか……ったく」


 あの化物を倒せたこと、そして部下が無事だったことに安堵しつつも……

 マリクはこの先のことを思うと、素直に喜べなかった。


「あんな化物が、あと一歩のところで街にいくとこだった。ジョージ・ジョカリ……あいつがいるかぎり、今後もこういった危機は起きるだろう。となると、上もあいつを放置できない……か」


 マリクは懐から葉巻を取り出して、火を付け一服吸う。

 朝日が徐々に昇っていき、この荒野を照らす。


「…………」


 ジョージは今回の件で完全に、上からマークされることだろう。

 そうなると、今まで以上に本気であの男を始末しようと考えるはず。


 リヒターは、ずいぶんと迷っているようだった。兄を倒すことに対して。

 だが、やらねばならない。


 今回の勝利は本当にギリギリだった。

 ガンマが覚醒していなければ……帝国は滅んでいただろう。


「ガンマ・スナイプ……か」


 彼の左手には、新しい魔蟲弓。

 さっきと違って、ガンマの左腕は人間のそれに戻っていた。


 しかし、最後に見せたあの黒い一撃。

 あれは、もはや人間のレベルを超えた一撃だった。


 そう……まるで……。


「魔蟲族……か」


 新人の体には何か秘密がある。

 天才魔道具師であるマリクの目には、そう映った。


「はっ! 関係ねえ……。こいつは部下で、おれは上司。おれが、守るべき物の一つさ。こいつが誰であろうとな」


 マリクは葉巻を吸い終わると、魔法飛行機マナ・バードを操作し、仲間たちの待つもとへと戻るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ