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69.万能感



 高速で逃げる超巨大毒蛾を倒すべく、俺は新兵器を使うことにした。


 じーさんから譲り受けたこの弓……魔蟲弓は、実に手になじむものだった。

 否、なじみすぎるんだ。


 体と武器とが完全に一体化しているような錯覚を起こす。

 

「ガンマ、おまえ弓を引けるのか? ヴィクター戦での戦いのダメージがまだ残ってるんじゃないのか?」


 魔法飛行機マナ・バードをマリク隊長が操作しながら尋ねてくる。

 ぐんぐんと上空へと登っていく俺たち……。


「大丈夫です。不思議と……体が軽いんです」

「軽い……? そりゃどういう……っ!?」


 こちらを振り向いたマリク隊長が驚いている。

 なんだ?


「おまえ……その体、その左腕! どうなってるんだ!?」

「左……ああ、ほんとだ」


 魔蟲弓に触れている左腕が、まるで黒い甲冑でも着込んでいるかのように変質していた。

 人間の肌じゃない。外装を取り付けてるんじゃなくて、皮膚が変質してるように思えた。


 そして……この変化を見ても、俺の心はみじんも揺らがなかった。


「隊長……なんか、静かですね」

「静か……?」

「はい。なんか……すごい集中できるんです。雑音が消えて……今までより遠くまで景色が見えるんですよ」


 魔法飛行機マナ・バードが飛んでいる風切り音が全く聞こえない。 

 強風にあおられ、空高く舞い上がっているというのに、外気を気にしない。


 集中できてるってことだろうか。


「ガンマ……おまえ、大丈夫なのか?」

「ええ、はい。それはもう。絶好調ですよ」

「いや、体調のことを聞いてるんじゃ……ああくそ! 話は後だ!」


 きっ、と魔法飛行機マナ・バードがその場で止まる。

 ……ああ、空が近い。


「これ以上は無理だ! ガンマ! 頼むぞ」

「了解」

 

 俺は弓を構えたまま……魔法飛行機マナ・バードから飛び降りる。


「ガンマぁああああああああああああああああああ!」


 あのまま弓を打ったら、反動で隊長にまでダメージが及ぶ。

 かといって隊長を降ろすわけにはいかない。


 だから、俺が降りる。

 すさまじい早さで俺が落ちていく。


 でも……不思議だ。何もかもが気にならない。

 この果てしなく続く青い空も、そして地の果てまでも……今の俺には見渡せそうだ。


 鷹の目スキルを使っているのか?

 いや、使っていなくても、俺の目は敵を……捕捉していた。


「目標捕捉。駆除する」


 空中だろうがなんだろうが、今の俺には不可能はない。

 万能感、とでもいうのだろうか。


 落下していく恐怖も、外したらどうしようという焦りもない。

 ただ、俺は。


 弓を引く。それだけだ。


「破邪顕正閃」


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