66.好機到来
人外魔境の円卓山にて。
超巨大蟲と戦う俺たち。
この土地から外に出したら、このばかでかい芋虫によって、街は壊滅的なダメージを負うこと必至。
俺たち胡桃隊は超巨大蟲と抗戦。
なかなかダメージが与えられず苦戦していたところ、メイベルの作った罠が発動。
錬金で作った底なし沼にはまった超巨大蟲。
「今だ! 野郎ども、たたみかけろ!」
「「「了解……!」」」
リスであるマリク隊長の号令で、俺たちは一斉に、罠にはまった敵に攻撃を加える。
俺は木の上から狙撃。
メイベルは即席の魔導人形を作って武装させ、沼にはまっている敵に向かって銃による一斉掃射。
【GI……GIGI……】
「おお! なんだか効いてるじゃないか! 敵も再生してこないし!」
拳銃に切り替え攻撃を加えるオスカーが、超巨大蟲の様子を見て歓喜の声を上げる。
そう、この沼に入ってから、あきらかに蟲の再生速度が遅くなったのだ。
メイベルが魔導人形を操りながら、得意げに言う。
「リフィル先生の作った毒とのコラボレーションだよ!」
「沼の成分にわたしが毒を混ぜておいたの。細胞を死滅させる、強力なやつをね」
錬金で泥沼を作り、そこに先生が得意の状態異常魔法で作った毒を混ぜ、毒沼トラップを作ったという訳か。
「おお! いいですねぇリフィル。細胞を破壊する毒を中和するのに忙しいみたいで、体の再生が間に合っていないですよぉ!」
「リヒターの言うとおりだ! 今なら攻撃を加えても再生されない! おまえら、これがチャンスだ! 殺す気でやれぇ!」
隊長二人の言葉に、隊員である俺たちは一致団結して、攻撃を加える。
銃による集中砲火は、こうした集団戦で最大の効果を発揮する。
なにせ、味方を撃たない。一定距離を取って火力を集中させられるっていうメリットがあるからな。
これを考案し、実際に作り出した帝国はすごいと思う。
あと何年もすれば、戦場での武器が剣や弓から銃に変わるだろうという確信があった。
今はまだ生み出されたばかりで、広まっていないけども。近い将来かならず、銃が魔法と並ぶ主戦力となるだろう。
【GI……GIGI……】
俺たちからの攻撃を食らって、超巨大蟲は苦しそうにうなり声を上げている。
抜け出そうともがいても、沼に足を取られてまたドボンッ……と落ちる。
「…………!」
「……ハァ!」
フェリサが手斧を振り回して、思い切り超巨大蟲に投げつける。
シャーロット副隊長は氷の槍を複数出現させ、それを照射。
『きばれやみんな!』
『『『おう……!』』』
煉獄業火球の連射。
アタッカー達による強力な攻撃……。
そしてメイベルや俺、オスカーといったバックスからの絶え間ない砲撃を受けて……。
【GI……GI……】
「はは! 見たまえ諸君! 蟲のやつがついに抵抗をやめたよ!」
オスカーに言われて、俺は鷹の目を調整して、敵の様子をつぶさに見やる。
超巨大蟲はさっきまでは、手足をばたつかせて沼から抜け出すモーションを見せていた。
だが今は暴れるのをぴたりとやめている。
そのままズブズブ……と沼に沈んでいくではないか。
『いける! いけるで……! こりゃガンマの兄さんの武器がこなくても勝てる! このまま沼に沈んでおれや!!!』
妖精のリコリス、そしてみんなが油断しているのがわかった。
だが……俺は見えた。
沼からボコ……ボコ……と微細な泡が立ち上っていることに。
「! おまえら油断するな……! 蟲はまだ生きてる!!!!!」
「ガンマ? 何を言ってるんだね、やつは沼に沈んで死んで……」
「まだだ! 呼吸をしてる! 総員警戒!」
俺がそう叫ぶのと、ほぼ同時だった。
いっきに沼の表面が盛り上がる……。
「伏せろぉおおおおおおおおおお!」
ドッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン……!!!
沼を突き破って、中から何かが飛び出したのだ。
『なんや!? 一体何が起きたんや!?』
急転した事態に皆がまだ、状況を飲み込めていない様子だ。
だが俺はわかった。
鷹の目で戦場を広く見回せる俺だからこそ……誰よりも早く気づけた。
「上だ! 上を見ろ!」
……そこに居たのは、1匹の蛾だ。
超巨大蟲と比べて一回りくらい小さいものの……。
それでも、尋常じゃない大きさの蛾である。
「みなさん、気をつけてくださぁい! 敵は羽化……進化したんですぅよぉー!」