58.人を超えた目
【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
俺は王直属護衛軍がひとり、剛剣のヴィクターとの戦いを繰り広げている。
ヴィクター。一見するとカブトムシの鎧を着込んだ、普通の人間に見える。
だがやつの纏う雰囲気は常人を、そして普通の魔蟲族を遥かに超えている。
狩人は【獲物の強さ】を目視できるのだ。
強い敵からは、赤い色のオーラを。
弱い敵には青色のオーラを。
これの正体がなんなのかわからない。
ただいいハンターはこの色の見分けの精度が高い。
ガンコジーさん曰く、【共感覚】というものらしい。
色々難しくて理解はできなかったけど、とにかく、俺は強さを色で見分けることが出来るのだ。
やつは今まで見たことのない、真っ赤な……いや、黒ずんだ赤色のオーラを纏っている。
狩人の仕掛けた罠に全く動じず、さらに全力全開の一撃を受けても死なない。
俺は距離を取りながら、破邪顕正閃を放つタイミングを探る。
だがやつは執拗に距離を詰めてくるのだ。
「ぬうんぅうん!」
やつには一瞬で距離を詰める力がある。 そしてでかい図体からは想像できない早さで大剣を振るう。
ボッ……! と【俺】を切り飛ばす。
「! ダミーか!」
「竜の矢!」
案山子の矢の矢で作ったダミーを切り飛ばし、隙を作った。
死角からの竜の矢。
「それは効かんと言っておろうが!」
だが……
ビチュンッ……!
「なっ!? こ、こやつ……先の全力全開の一撃で砕いた鎧の部位を、正確に狙って……!」
俺は今日、黒弓を5つしか持っていない。
破邪顕正閃は、一発撃つごとに弓を壊してしまう。
1発はさっき撃った。
そのときにやつの大剣1本と、鎧の一部を砕いた。
はっきりわかったことがある。
やつの体の硬度は、鎧に依存している。
その下にある肉体は、俺たちとそうは変わらない。
ならば鎧のない部位を狙い撃ちすればダメージは通る。
「鋼の矢!」
貫通力重視の魔法矢を放つ。
今度も同じ部位に向けてだ。
ヴィクターはたまらず距離を取る。
だがそれが狙いだ。
俺は地に足をつけて、渾身の力で弦を弾く。
「破邪顕正閃!」
弓の弱点は近くにいられると、攻撃が当てられないこと。
射線に入らなければ攻撃は簡単に避けられちまうからな。
だから距離を取らせた。
竜の矢で俺の狙撃の正確さを印象づけ、二発目の鋼の矢は囮。
また狙い撃ちされるんじゃないかと心理に働きかけ、俺が本命を放つための……ブラフ。
「ぐぉおおお!」
聖なる光の矢がビクターの体を包み込む。
一瞬の静寂のあと、光の矢が着弾したことによる爆発音が響き渡る。
「…………」
ボロボロ……と3つめの弓が崩れていく。
俺はすぐさま4つ目の弓を取り出して構える。
……手応えは、あった。
だがこれで終わるとは到底思えなかった。
煙が晴れると同時に、ボッ……! と斬撃が飛んできた。
俺の目はやつの攻撃を捕らえている。
それをスウェーで避けて、星の矢を放った。
煙を星の矢が払う。
やつの胴体を守っていた鎧が砕け散っていた。
「なぜ、我が生きてるとわかった?」
「答えてやる義理はない」
「ハッ……! そのとおりだな」
俺の目には敵のオーラが見える。
生きてるやつはこのオーラを発している。
裏を返せば、オーラが消えていない以上やつは生きてる。
煙の中だろうと、やつの放つ強烈な光を見失うことはない。
「貴様には不意打ちも効かぬようだな。それに……正確な狙撃の腕。ますます欲しい。どうだ、我が配下に……」
「くどい」
俺は案山子の矢の矢を放ち、俺の分身を作りまくる。。
合計で10体。
やつを中心に取り囲んで、俺は俺のダミー達とともに弓を構える。
全力全開の一撃。
「ほう、こんな芸当もできるのか。本当に器用だな貴様は」
「破邪顕正閃!」
10体の俺から放たれる、10本の光の矢。
だがヴィクターは本物だけを正確に見抜いて……。
「攻撃反射!」
光の矢を剣ではじいてきた。
馬鹿な、やつは仕掛けを見抜いたというのか。
はじき返される光の矢を、俺は即座に横に避けてかわす。
「遅い!」
「!」
やつが先回りしていた。
大剣を高速で振り下ろす。
死という言葉が脳裏をよぎる。
だが俺の目はやつの剣を、完全に見切っていた。
ゆっくりと振り下ろされていくヴィクターの剛剣。
これはやつが手を抜いてるんじゃない。
やつの剣を、俺の目が上回っている。
俺の動体視力はヴィクターの動きを捕捉してるのだ。
だが……避けられるか?
やつの攻撃を見極めることができても、見極めだけしかできない。
俺はとっさに竜の矢を明後日の方向に放つ。
その反動で俺の体が少しずれる。
結果、俺はヴィクターの直撃を受けずにすんだ。
だがやつの剣圧に押されて、俺は吹っ飛ばされる。
時間がまた戻る。
がんっ! と俺は背中を大木にぶつける。
「がはっ……!」
体……いてえ。骨が……臓器にささってやがる。
だがこの程度の負傷ですんでラッキーだ。
「……本当にすばらしいな、貴様は」
ヴィクターが感心したようにうなずく。
俺は立ち上がって弓を構える。
ふぅ、ふぅ、と呼吸を整える。
「……なにがだ」
「その目だ。完全に我の攻撃を見切っていた。ありえん。我の剛剣は、放てば最後、敵を必ず一撃で葬る……不可避の必殺技。それを見極めることができるものは存在しない……だが」
ヴィクターが俺の体を指さす。
「貴様の体は、その目に追いつけていない。いかに敵の攻撃を見極めようと、体がそれに対応できなければ、敵の攻撃を避けることは不可能だろう」
「……ああ、わかってるよ」
時間がゆっくりに見えても、実際に時間の流れを止めたりゆっくりにしてるわけじゃない。
俺の体は、目についていけてない。
「だからこそ……惜しい。貴様が人間であることが、惜しい。貴様が我と同じ蟲ならば、目と同じ格を持った肉体ならば、避けれただろうに」
「ハッ……だからなんだ。あり得ない仮定だ。俺は……人間だ」
ふらふらする。やばい……結構……やばい。
呼吸が整わない。肺だ。たぶん、骨が肺に突き刺さっている。
それでも……やるんだ。
「てめえを狩る。俺は……狩人……人間だからな」
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タイトルは、
『最強女勇者パーティのお世話係〜無能だからと魔境に置き去りにされた僕、史上最強のお姉さん達(生活力皆無)に拾われ同棲してたら世界最強になってました。今更帰れません、皆僕を手放してくれないので…』
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