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49.瘴気の森へ

【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 俺たちは円卓山テーブルマウンテンの山頂へと到着した。

 妖精のリコリス曰く、ここに魔蟲族が潜伏しているらしい。


「テーブルっていうより、お盆ねこれは」


 山頂に立つリフィル先生が眼下の様子を見下ろしながらそう評する。

 俺たちが登ってきた崖の反対側には、大森林が広がっていた。


 上から見ると山頂部をくりぬいて、そこに森が生えてるような感じだった。

 鷹の目を使って確認して見るも、かなり視界が悪い。


「リコリス。森を覆っている、あの紫色のモヤみたいなのはなんだ?」

『なんや兄さん、瘴気しょうきを知らんのかい?』

「しょうき……」


 なんか前に聞いたことがあるような気がするが忘れてしまったな……。

 すると科学者であるリヒター隊長が説明をする。


「人間が吸い込むと人体に多大なダメージを与える有毒ガスのことですよぉ。妖精郷アルフヘイムの森にも同じガスが充満しておりますねぇ」


 妖精郷アルフヘイムとは帝国北部に広がる大森林のことだ。

 そこは妖精のすみかになっており、また、俺たちの仇敵である魔蟲たちもうじゃうじゃいる。


 そうか、瘴気って単語は帝国軍に入ったときに説明を受けていたな。


「今ドローンを飛ばして大気中の瘴気濃度を計測しましたがぁ、妖精郷アルフヘイム並の濃度の瘴気が充満してますねぇ」

「それって、大変じゃないの。だって妖精郷アルフヘイムって何の装備もなしじゃ中に入れないんでしょ?」

「その通り。酸素ボンベやガスマスクなしで入るのは、自殺行為ですよぉ。もちろん、そんな装備はここにありませんねぇ」


 当然だ。もとよりこの円卓山テーブルマウンテン妖精郷アルフヘイムと同じ、瘴気に満ちる森になってるなんてわかっていなかったからな。

 あくまで今回の依頼は、この人外魔境スタンピードの地で魔蟲族を見かけたから調査しろってものだったわけだし。

 瘴気の中を調査する用のアイテムなんて持ってきていない。


「さてどうしましょうか。魔蟲族は楽園の森の中にいる。けれど森の中は瘴気が満ちていて入れない。ガスマスクはない」

「いちおう浄化ポーションは持ってきてますがぁ、さすがに数が足りませんねぇ」


 隊長が空色のポーションを取り出す。


「浄化ポーションってなんですか?」

「毒や呪いを解除するポーションですよぉ。ただこれは、あくまで体内の異物を浄化するだけですのでぇ」


 浄化ポーションがあってもガスの森の中を歩けるようになるわけじゃない。バリアが張られるわけじゃないんだし。


『なんやほんま、人間って不便な生き物やなぁ』


 ふと、俺は気づく。


「なあリコリス。おまえはこの瘴気のなかでも、平気なのか?」

『おう、全然問題あらへんよ』


 隊長はじぃっとリコリスの翅を見つめる。

 この妖精が羽ばたくたびに出る鱗粉に着目しているようだ。


「詳しく調べないとわかりませんがぁ、この鱗粉が瘴気を中和してる……のでしょうねぇ」

「あら、じゃあ簡単じゃない。みんな固まって、リコリスちゃんの後についていけばいいのよ」


 ぽんっ、とフェリサが手を叩く。

 確かにいい案に思える……だが。


『こんな大人数、カバーできるんかいな? わいの出す鱗粉で』

「確かに難しいですねぇ……。ぴったりくっついて、一人分を中和できる感じですかねぇ」

「それにまとまってるのは危険だ。万一敵と遭遇したとき、固まってると全滅のリスクが高くなる。それに、リコリスのそばを離れた瞬間、瘴気にやられてしまう」


 俺の意見に、リヒター隊長が同意するようにうなずく。


「せめて鱗粉を増産できれば……ああくそ、時間が惜しいです……。鱗粉をラボに持ち帰れば、成分を分析して増産が可能なのに……!」


 そう、俺たちには一度帝国に戻っている時間はない。

 リコリスの報告によると超巨大な蟲が実験によって生み出され、夜明けくらいには暴走を始めるという。

 なんとしても後数時間で、蟲がふ化して暴れ回る前に対処せねばならない。


「私も結界魔法も浄化魔法も覚えてないし……ごめんなさい」

「…………」ふるふる


 先生はもとより、フェリサも浄化の手段を持っていない。

 隊長はラボに帰らないと無理。となると……。


「リコリス」

『なんや?』

「おまえの翅、少しだけ……分けてくれないか?」

『? な、なんのために』

「新しい魔法矢を開発する。今、ここで」

『なっ!? 魔法矢の開発やと!?』


 魔法矢。魔力で作られ、魔法の効果を発揮する矢のことだ。


「ガンマ君。それは無理です。魔法矢の開発には長い時間がかかるとききますよぉ」

「確かに。宮廷魔道士のメイベルもそう言ってました。でも……大丈夫です。こと、魔法矢にかけてなら、俺は素材さえあれば、新しい魔法矢がすぐに作れます」

「……それが本当なら、前代未聞ですが……」


 だがもう俺がやるしかないのだ。


「リコリス、頼む」


 妖精は悩むそぶりを見せた。それはそうだ。妖精の翅は、俺たちにとっての手足と言ったパーツに等しいだろう。

 それをちぎってよこせということは、痛みを伴うことだから。


 だがリコリスは最終的にうなずいた。


『ええで』

「いいのか?」

『あたりまえやん。楽園を取り戻すためやからな。協力はおしまんで。……ま、まあ痛いのはいややけどな』

 

 リコリスはそう言って、恐る恐る俺に翅を向けてくる。俺はちょっぴり翅をちぎる。


「ありがとう。大事に使う」


 俺は右手で翅の一部を握りしめる。

 魔力をこめ、いつも通り魔法矢を作るイメージをする。


 魔法矢の作り方はシンプルだ。原型となる素材(モンスターや鉱物等)に、俺の魔力を流し込み、混ぜる。


 すると魔力の性質に変化が起きる。

 たとえば不死鳥の羽を素材に作った魔法矢は、炎の性質に魔力が変化した。


 今回、妖精の翅を素材に魔法矢を作ったところ、同様に魔力の性質変化が起きた。


「……ラーニング完了」


 俺はぎゅっ、と拳を握りしめる。

 黒弓を取り出して、今習得した、新しい魔法矢を撃つ。


「【妖精の矢(ホーリィ・ショット)】」


 俺の放った魔法矢は空中で光の球体へと変わる。


 翅を生やした球体が、俺の周りをくるくると旋回しだした。


『こりゃ……驚いたで! 妖精や! 兄さん、妖精を人工的に生み出したんや!』

「すごい……すごいですよガンマ君! 魔力による疑似生命体の生成! こんなの、宮廷魔道士はもちろん、宮廷錬金術師でもできる人はごく限られてる……!」


 リヒター隊長すら驚いていたので、結構なことなのだろうか。


「今代でできるのは、天才錬金術師のニコラス・フラメルくらいですよ……すごい……ガンマ君……本当にすごいです!」

「リヒターちゃん。おちついて。この魔法矢はどういう効果があるの?」

妖精の矢(ホーリィ・ショット)は文字通り、妖精を擬似的に生み出す魔法矢です。妖精の鱗粉の恩恵を受け、瘴気の中でも活動できるようになります」


 俺は人数分の妖精の矢(ホーリィ・ショット)を放つ。

 先生達の周りに疑似妖精たちが出現し、対象を妖精の鱗粉で守る。


「ガンマ君……君は魔法の才能すらあるんですか?」

「いや、なぜか知らないんですけど、俺の魔力には倒した獣や採取した素材の性質を、コピーする力があるんです」

「! なる……ほど……そういうことですか……」


 リヒター隊長はひとりだけ、納得したようにうなずいていた。

 前から確かに疑問だったんだよな、俺の魔力の性質変化について。


「ガンマ君。帰ったら一度精密検査を受けてもらってください」

「あ、はい。それはもちろん」


 なにはともあれ、これで瘴気の満ちる森の中を進んでいけるようになったぞ。

【★☆★とても大切なお知らせ★☆★】


新作投稿しました!

タイトルは、


『神眼持ちの【獣医令嬢】は破滅を回避し田舎で静かに暮らしたい〜バッドエンドな未来を回避するため、辺境で町医者はじめたら、何故か獣の国の王子様と神獣モフモフたちから溺愛されてます〜』


ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!


リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n2951hv/

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