表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/242

44.VS砂蟲



 俺たちは道中、巨大なミミズの化け物、砂蟲サンドワームと遭遇した。


 それに追いかけられている様子の、妖精リコリス。


『あいつは獲物をずぅっと追いかけてくるで! かんっぺきに倒してや!』


 追い払うのでなく、完璧に倒せか。


 俺はフェリサとともに荒野をかける。


 地中に潜ってる砂蟲サンドワーム

「…………!」


 耳のいいフェリサは敵の出現タイミングを探ることができる。


 俺を捕食しようと、足下からやつが出現。


 そのまま俺を食おうとしてくる。


 だがフェリサからのアイコンタクトもあって、それを回避することに成功。


「【星の矢(アサルト・ショット)】!」


「…………!」


 俺は右側面から、無数に分裂する魔法矢を放つ。


 フェリサは鎖突きの手斧をブーメランのように投げて、砂蟲サンドワームをズタズタに引き裂く。


 魔法矢と斧で、相手を粉みじんにしたのだが……。


「グボロオォオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 反対側から、また砂蟲サンドワームが出現する。


 蜘蛛の矢キャプチャー・ショットを近くの岩に貼り付け、その伸縮を使って俺は瞬間移動。


 敵に食われることはなかった。


 フェリサは斧を投げて追撃するものの、すぐにやつは地中に潜ってしまう。


 今のやりとりを見ていたリヒター隊長が言う。


「どうやら砂蟲サンドワームは再生能力を持つようですねぇ。片側の頭部が残っていれば、そこから新しい胴体が生えてくるようです」


 ……厄介この上ない。


 ミミズのやつは、地中を移動している。

 地上に顔を出すとき、もう片側の頭は地中だ。


 いかに地上のミミズを粉々にしたとしても、地中の頭が残ってる限り、無限に再生してくる。


「やつを地中から地上へ追い出すのは、難しそうですね」


「ガンマ君の言うとおりですねぇ。捕縛して引っ張り出そうとしても、あの速さでは捕らえられませんねぇ」


「と、なると内部からの破壊でしょうか」


「それが妥当なところでしょーう」


 フェリサの獲物は手斧。内部から一気に爆破するようなまねはできない。


 となると俺がやつに食われて、中から爆裂系の魔法矢で狙撃するのがベストか。

「だめよガンマちゃん」


 ぽん、とリフィル先生が俺の肩を叩く。

「それだと、中に居るガンマちゃんが火傷しちゃうわ」


「先生……でも、先生の治癒があれば、火傷はすぐ治りますよね?」


「ええ……でも、痛いのはいやでしょ? 誰でも」


「大丈夫です。狩りに怪我はつきものですし」

「だめ」


 リフィル先生が、珍しく有無を言わさない感じで言う。


「あなたが大丈夫でも、周りはあなたが傷つくことで、心が傷ついてしまうわ」


「先生……」


 確かに、独りよがりな意見だったかもしれない。


 俺一人が痛みに耐えればいいと。


 狩りするときはずっと一人だったから。

「ガンマちゃん。今は狩りじゃないわ。チームで戦ってるのよ」


「チーム……」


「そ。もうあなたは荒野を一人で駆ける狩猟民族じゃない。仲間のために戦う帝国軍人の一人でしょ」


「…………」


 そうだ。そうだよ。俺はもう、違う場所に来たんだ。


 くそ……なにやってんだ。俺は前のパーティで、独りよがりなプレイをした。


 俺一人が黙々と仕事していればいいと。功績が目立たずとも、それが仲間のためになると思って、勝手に重荷を背負って……その結果、パーティを追われたじゃないか。


 独りよがりになるんじゃない。自分だけを犠牲にするんじゃない。


 仲間のために、仲間と戦う。それが軍人のあるべき姿じゃないか。


「すみません。リフィル先生。一人で突っ走るところでした。力貸してもらえますか?」


「もちろん♡ お姉さんに秘策ありよ♡」


 先生が手短に作戦を説明する。


「そんなことができるんですか?」

「まーね。お姉さんは回復要員だけじゃないのよ」


 それならいけるかもしれない。


「フェリサ! 聞こえてるな!」


 離れた位置で、ひとりで敵を引きつけているフェリサに言う。


 彼女は耳がいいので、先生の作戦が聞こえていたはずだ。


 俺はフェリサと、砂蟲サンドワームを挟撃する。


 やり方は一緒。星の矢(アサルト・ショット)と手斧による、物量で推す作戦だ。


『あかんて! それじゃさっきと同じや! 地上の砂蟲サンドワームをやっつけても意味ないやん!』


 妖精リコリスからのツッコミ。そう、これは向こうにもそう思わせるための布石。


 やつは片側が破壊されると、再生する時間を取るため、逆側に逃げる。


 その習性を逆手に取る。


 ちょうど逃げた先にリフィル先生が立っている。


 やつはちょうどいい獲物がそこにいると思っただろう。


 俺たちから離れてるし、武器を持ってる感じでもない。


 砂蟲サンドワームが大きな口を開けてリフィル先生を飲み込む。


『さっきのおっぱいお化け食われとんやん! 死んでもうたやんけーー!』


 リコリスが叫ぶ。そう、向こうも思っただろう。


 だが……。


 ぼこっ! と砂蟲サンドワームの胴体が膨らむ。


 ぼこっ、ぼこっ、ぼこっ! と連続で砂蟲サンドワームの体が膨れ上がっていく。


 どばんっ! という音を立てて、砂蟲サンドワームの体が内側から、爆発四散した。


 衝撃によって地中にあった砂蟲サンドワームの体も、地上へと飛び散る。


蜘蛛の矢キャプチャー・ショット!」


 俺は肉片の中からリフィル先生を見つけだし、蜘蛛の矢キャプチャー・ショットを貼り付ける。


 そのままぐいっと引っ張ると、先生がこちらに飛んできた。


 俺はそのままキャッチ。


「…………!」


 フェリサはその間に手斧を投擲。


 鎖で肉片をすべて一カ所に集めて縛り上げる。


 先生が俺の体にしがみついている。

 俺は魔法矢を構えて放つ。


鳳の矢フェニックス・ショット竜の矢(レーザー・ショット)


 俺は魔法矢を二つ出現させる。


 合成矢。ふたつの魔法矢を併せることで、より強い威力の魔法矢を作る技術。



「「爆竜の合成矢エクスプロージョン・ノヴァ!」


 青く輝く炎の矢が一直線に飛んでいく。

 矢が砂蟲サンドワームの肉塊にぶつかると同時に、すさまじい爆発を起こす。


 爆風、そして熱波によって、砂蟲サンドワームの細胞がボロボロと崩れていく。


 爆竜の合成矢エクスプロージョン・ノヴァは、爆裂の魔矢。


 高火力の魔法矢を併せることによる、周囲一帯の酸素をすべて消費させるほどの、異次元の火力を発揮する。


 ……たしかに、閉所でこれを使うのは自殺行為だ。爆風によるダメージを防げたとしても、後にやってくる酸欠によって俺は失神してたろう。


「狩りと、戦いは違う……か」


 身をもって実感することができた。


「うん、よくできました♡」


 ちゅっ、と先生が俺のほっぺにキスをしてきた。


 彼女はずっと俺に抱きついたままだった。


「お、降りてください」

「やーよ♡」


 ぎゅ~~~~~とくっついてくる先生。

 一方で仲間達がぞろぞろと近づいてくる。


 は、恥ずかしい……。



「…………」


 フェリサはいらついていた。先生はニヤニヤと笑ってる。妖精のリコリスは唖然とした表情をしていた。


『信じられへん……砂蟲サンドワーム倒すなんて……ばけものか』


「いやぁお見事でしたねぇ」


「…………」げしげし。


 まあ何はともあれ、敵を倒せて良かった。大事なことも学んだしな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >周囲一帯の酸素をすべて燃焼させるほどの 酸素は燃焼しないので、 「燃焼で、周囲一帯の酸素をすべて消費させるほどの」 とかの方が、自然だと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ