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43.砂蟲《サンドワーム》と妖精



 夜、荒野のど真ん中。


 外から悲鳴が聞こえてきたので、様子を見てみる。


 鷹の目スキルを発動させ、周囲の状態を探る。


 だが……。


「なんだ? 見当たらないぞ……」


 周囲一帯に敵影は見当たらない。

 どこだ、敵は……。


 ぐいっ……! と誰かに背中を引っ張られる。


 そのまま俺は空中へと飛んでいく。


「フェリサ……!」


 鷹の目を解除。俺を後ろに放り投げたのは、妹のフェリサだ。


 彼女が立っていた場所に、巨大な何かが出現する。


竜の矢(レーザー・ショット)!」


 巨大な何かにめがけて俺はとっさに魔法矢を放つ。


 妹を喰おうとしていた存在をジュッ……と焼いた。


 フェリサは空中で身を翻し、軽やかに着地。


「すまん、助かった」


 俺は弓を使う狩人だ。

 明るいところ、開けた場所での狩りを得意とする。


 また、鷹の目スキルは鳥瞰を可能とするが、地上の敵、そして近くの敵には気づきにくい弱点がある。


「フェリサ。敵は、地下だな?」

「…………」こくん。


 フェリサが地面に耳をつける。


「何してるの、フェリサちゃんは?」


 後れてやってきたリフィル先生が俺に問うてくる。


「フェリサは音で、敵の位置を探ってます」


「音……?」


「はい。俺が目がいいのと同様に、フェリサは耳がいいんです。普段は耳に詰め物してますけど」


 なるほど、とリヒター隊長がうなずく。

「あんまりしゃべらないのは聴覚が鋭敏すぎるからなんですねぇ。自分の声で聴覚を麻痺させないように」


 その通り。さすがリヒター隊長。


 妹が敵の位置、および【もう一人】を見つけたらしい。


 俺は鷹の目を発動させる。周囲を探ってそれを見つける。


「敵は1体です。地中を高速で移動しています」


「ガンマちゃんの魔法矢で殺しきれなかったの?」


「多分再生持ちなんだと思います」


 フェリサが顔を上げて、両手の手斧を構える。視線の動きから、敵の出現位置を予測。


 二人で走り出して敵を誘導。


「フェリサ! 挟撃するぞ!」


 俺とフェリサはタイミングを合わせて、左右に飛ぶ。


「グボロロォロロロロロロロロロロ!!!!!!」


「でっけえ、ミミズだな……!」


 このあたりじゃ見たことのない獣だ。


 かなりの長さがある。体は瓦のように固そう。だがぐねぐねとぜん動してる。


 体表、そして円形の巨大な口には、びっしりと牙が生えていた。


星の矢(アサルト・ショット)!」


「…………」ぶん!


 無数に分裂する魔法矢と、フェリサの投げた手斧により、ミミズは細切れにされる。


「やったの!?」

「いや……まだですね」


 リヒター隊長のいうとおり、まだ手応えを感じられない。


 獣の命を摘んだときの、あの感覚。それがない。


「フェリサは先生達を守ってくれ。俺はもう片方を助けてくる」


 俺は魔法バイクを借りて、北西へと向かう。


 どうにもあのでかミミズは、頭を二つ持っているようだ。


 そういう動きをしている。


 もう片方の頭は、【誰か】を追いかけてる。


『ひぃいい! たすけてぇえやぁああああああああああああ!』


 でかミミズが顔を出し、何かを追っている。


 ぐぉ! とその大きな口で、そいつを丸呑みにしようとしていた。


蜘蛛の矢キャプチャー・ショット!」


 白い魔法矢が飛んでいき、ぺとっ、と逃げてるそいつの体に当たる。


 そこから一直線上に伸びた白線を手に、ぐいっ、と引っ張る。


『ひぎぃいいいいいいいいいいい! ひっぱられりゅぅううううううううううううううううううう!』


 蜘蛛の矢キャプチャー・ショット。捕縛用の魔法矢だ。


 鳥もちのようにくっついて、敵を引き寄せたり、網状に展開して敵を無力化できたりする。


 ミミズに喰われようとしていたそいつに魔法矢をくっつけて、引きよせる。


 間一髪で喰われるところだった。


『どわっち!』

「……? なんだ、こいつ……? 蟲……?」


 見たことのない生き物だった。


 ぱっと見ると人形だ。かなり小さい。


 だが背中には蟲のような、翅が生えてる。


「魔蟲族か……おまえ?」

『ああん? なんやねん、あんなニンピニンとわいを同列に扱うんちゃうで! わいは、妖精や!』


「妖精……」

『せや! 見てみぃ、こんなかわいいかわいい蟲がおるか? おらんやろ!』


 ……よくわからんが、この翅の生えた小さな人間は、妖精という生き物らしい。

 ……妖精。

 妖精郷アルフヘイム、という単語は聞いたことがある。


 そこと何か関連があるのだろうか……。

「おいおまえ」

『リコリスや! おまえちゃうわ!』


「……リコリス。おまえ何に追いかけられてたんだ?」


『おお! せや! わいは砂蟲サンドワームから逃げとったんや!』


砂蟲サンドワーム……」


『せや! 最近魔蟲族のアホらが開発した、新しい蟲や!』


「! 魔蟲族……開発だと……!」


 この妖精……リコリスのやつ、どうしてそこまで知ってるんだ?


 敵か……?


『わ、わいは敵やない! プリチーな妖精や!』


「! おまえ……なんで俺の心を……?」


『そないな事どーでもええやろ! なああんた、助けてくれへん? わいあの砂蟲サンドワームに命狙われとんねん!』


「みたいだな」


 ミミズ……砂蟲サンドワームは方向転換して、こちらに向かってくる。


『助けておくれーや!』


 ……この謎の砂蟲サンドワームの正体を知っていたこと。そして、魔蟲族側の内部事情を知ってる感じだ。


 有益な情報を引き出せることだろう。


 狩るのは、いつでもできそうだし、ここは助けてやるか。


「あとで事情話せよ」

『おおきに兄さん!』 

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