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39.朝ご飯(虫)

【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 俺は隊のみんなと一緒に、故郷の村へとやってきていた。


 じいちゃんの家に泊まった翌朝。


 リビングには俺、リヒター隊長、リフィル先生。

 妹のフェリサ、村長にして育ての親であるガンコジーさんが、食卓を囲っている……のだが。


「無理無理無理無理ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 リフィル先生が悲鳴を上げる。いつも大人の余裕のある先生が、まるで幼いこのように泣いていた。


 俺たちは敷物のうえに座って、車座になって飯を食っている。


【朝食】を見て先生が悲鳴を上げているのだ。


「どうしたんですか、先生?」

「どうした、じゃないわよ! なにこれ!? ガンマちゃん!」


「? この地方じゃ、ごく一般的な朝食ですけど」


 俺もフェリサも、ガンコジーさんも、茶碗片手にむちゃむちゃと飯を食らう。


 茶碗の中に入ってるのは、白米とよばれる、俺たちの部族がよく食べる穀物だ。

「ほほう、白米ですか~。遥か東方の国、極東では似たようなものを食べるとききますねぇ。帝国や王国でも、品種改良されたものが少数ですが、出されてますね」


「白米はいいのよ! 問題はその中身! なにこれ!? 何が混ざってるの!?」


 先生が半泣きになりながら、箸を茶碗の中につっこんでとりだす。


「ただのはちですが?」

「いやぁああああああああああああああああああ! はちぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 何を驚いてるのだろうか。

 蜂くらいで。


「ガンマちゃん! わかってるの!? これ、ふっつーに異物混入よ!? 飲食店でこれ出てきたら、お店潰れちゃうわよ!?」


「またまた、大げさですよ。蜂ご飯なんて、ここらじゃ普通の郷土料理です。異物じゃないですよ。ほら」


 じいさんも妹も、むっしゃむっしゃと蜂ご飯を食べている。


「え、ええー……」


 先生がなぜかドン引きしていた。

 どうしたんだろうか、こんなにおいしいのに。


「まあまあリフィルせんせぇ~。意外とおいしいですよ~。あまくって」


「む、無理……味云々以前に、ビジュアルが受け付けないわ……」


 げっそりするリフィル先生。

 見た目なんて関係ないと思うんだけどな。うまいし。


「あ、じゃあ、こっちの食べます?」


 俺はもう一つの茶碗を先生にさしだす。

 白い【つぶつぶ】が山盛りとなっている。


「あ、こっちなら食べれそう。見た目も普通の白米だし」


「え、白米じゃないですよ?」


「え……………………?」


 むしゃ、とリフィル先生が一口食べる。

「なに……これ……甘い……ぷちぷちする……お米じゃない?」


 先生が箸で白いつぶつぶをすくい上げて、じぃっと目をこらす。


 一気に顔から血の気が引いて……。


「ひやぁあああああああああああああああああああああああああ! 虫ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

 先生が後ろに転んで、ガタガタと震え出す。


 茶碗からこぼれているのは……白い虫だ。


「何これ何これ何これぇええええええ!?」


「蜂の子ですよ」

「はちのこぉ!?」


「はい。蜂の幼虫です」

「この白いワームが!?」


「ええ、甘くっておいしいですよ。蜂の子丼です」


 落ちてる蜂の子丼を、フェリサが拾ってむっしゃむっしゃと食べている。


 ガンコジーさんは黙ってむしゃむしゃ。

「が、ガンマちゃん……違うの。ビジュアル関係なく、虫がだめなの……」


「こんなにおいしいのに?」


「味は関係ないの! 虫が無理なの!」


「ええー……じゃあ、今朝の料理全部だめじゃないですか」


「これ全部虫料理なの!?」


 俺はうなずいて、一つずつ説明する。


「これは蛆入りチーズです」

「うじぃいいいいいいいいいい!?」


「こっちはシロアリの卵のサラダです」

「シロアリぃいいいいいいいいい!?」


「で、こっちは竹蟲。蛾の幼虫を油で揚げた」

「もういい! もういい! もうやめてぇええええええええええええ!」


 先生が泣きながら首を振る。

 どうやら本当に、生理的に受け付けないようだ。


「こんなおいしいのに、なあフェリサ?」


「…………」もしゃもしゃ、こくん。



 先生が乱れた髪の毛を手でなおしながら言う。


「が、ガンマちゃんって……意外と天然さん?」


「そうですか? 人外魔境スタンピードじゃ虫食いは当たり前ですよ」


「外の常識とここの常識は異なるのよ……はぁ……レーション食べておなか膨らませましょ」


 レーションとはマリク隊長が考案した、保存食だ。


 見た目は悪いし、味も悪いけど、栄養価があるし保存も利く。


 もそもそとリフィル先生がレーションを食べてる。


「それだけじゃおなかすきません? 【へご】くらいでも……」


「ガンマちゃん、へごってその蜂の煮物を指してるのなら、ノーサンキューよ」


 一方でリヒター隊長が、真剣な表情で【へご】の入った皿を見つめている。


「どうしたんですか、リヒター隊長?」


「……君たち狩猟民族は、普段から昆虫を食してるのかい?」


「ええ、ここじゃ幼い頃から当たり前のように」


「なる、ほど……なるほど……そうか、そういうことか……だから、この子らは尋常でない力を……」


 ぶつぶつ、と隊長がつぶやいている。


 なんだ?


「昆虫食がどうしたんですか?」

「いや、まだ仮説ですからぁ、今は何も言いません。検証がすんだら、状況共有しますよぉ」


 さて、とリヒター隊長が改まって言う。


「これからのお話しましょうかぁ」


 リヒター隊長は懐から、【タブレット】を取り出す。


 魔道具ドローンで撮影した映像が、タブレット上に表示される。


「この人外魔境スタンピードの中央部にある、円卓山テーブルマウンテン。ここに調査に向かいますぅ。ただ、現地で何があるかわかりませんので、ガイド役をガンマ君の他に、もう一人つけたいのですがぁ」


 するとフェリサが、ばっ! と手を上げる。


「おまえ……寝てろ。病気してんだから」

「…………」ぶんぶん。


「まったく、相変わらずきかん坊だな」


 まあフェリサも狩人だし、現地のことよく知ってるし、何より腕も立つ。


 ガイド役としては適任だろう。


「ではメンバーはボク、リフィル君、ガンマ君、そしてフェリサ君の四人で。魔法バイクはサイドカーもいれて3人乗りなのですがぁ」


「じゃあうちの地竜ちりゅうを使いましょう」


「ほほぅ、地竜ですかぁ。飛行能力が退化したかわりに、地を走る力に特化してるという」


「はい。うちの地竜ならバイクと同じくらいの速度で走れます」


「そ、そうですかぁ……」


 なぜだろう、隊長もドン引きしていた。さっきのリフィル先生みたいに。


円卓山テーブルマウンテンについたら、なるべくドンパチは避けてください。あくまでも、今回のは実態調査のみ。本格的な駆除は人員を投入して後日行うのがベストでしょう」


「その間にでも蟲が増えてしまうんじゃないの?」


 リフィル先生が意見すると、隊長が首を振る。


「だとしても、人命第一ですよぉ。命あっての物種ですからねぇ」


 こうして、俺たちは調査へと向かうことにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さんの地域じゃ「へご」って言うんだね。アッシの地元だと「へぼ」って言うんだけどね・・・地元の名産なのだがアッシにはどうしても食えん。親は無理矢理にも食わそうとしてたが意地でも食わんやっ…
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