表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/242

38.先生の診察



 人外魔境スタンピードのソノイ村にて。


 俺は育ての親であるガンコジーさんから、魔蟲族が最近うろついてる話を聞いた。


『ソノイの村から北東へ行ったところに、円卓山テーブルマウンテンというわしらの狩り場がある。そこで人型の蟲が多数目撃されておる』


 とのこと。

 円卓山テーブルマウンテンの場所はわかってるので、すぐにでも出発したかった。


 だが、もう日が暮れていたので、出発は明日ということになった。


 俺たちは実家に泊まることになった。


 俺が使っていた部屋に、俺と妹のフェリサが泊まり、妹の部屋に先生と隊長が泊まることになった。


「悪いな、フェリサ。兄ちゃんと一緒の部屋で」


「…………」


 フェリサはふるふると首を振って、きゅっと抱きついてきた。


 ふんにゃりと笑ってるところから、一緒に寝るのは嫌がってない様子がうかがえる。


「けほけほっ」

「大丈夫か?」


 フェリサは病にかかっている。

 その治す薬は今のところ存在せず、症状を緩和させる高い薬を飲ませているところだ。


「そうだ……もしかしたら……フェリサ、ちょっとついてきてくれ」


 俺は妹を連れてリフィル先生の元へ向かった。


 部屋の前にて。


「先生。いますか?」

『はぁい、どうぞー♡』


 妹の部屋のドアを開けると……。


「なっ!? なんですか、そのかっこう! 半裸じゃないですか!」


 先生は上着とシャツをぬいで、ブラとショーツだけになっていた。


「ごめんね、暑くって♡ で、なぁに用事って?」


「その前に服! 服を着てください!」



 や、やばかった……。

 真っ赤なブラからは、でかすぎる乳がこぼれそうになっていた。


 右胸のところにほくろがあって、エロかったな……。


 い、いかん。同じ部隊の仲間を、そんな性的な眼で見ちゃいけない。


「…………」


 ぎゅ~~~~~~っと、フェリサが万力のような力で、俺の手の甲をつねってきた。


「痛いって」


 ぎゅ~~~~~~~~~~。


「なんだよ、何怒ってるんだよ」

「…………」


 ぷいっ、とフェリサがそっぽを向く。


「あらまぁ♡ 妬いてるのねぇ♡ かーわーいーい♡」


「先生はさっさと服着てください!」


 ややあって。


 先生は下着の上から白衣を羽織っただけの姿で、妹を診察していた。


 いや、まあ下着姿じゃないんだけど……なんか逆にエロい。


 先生は診察を終えて言う。


「【イマンシ病】ね」

「イマンシ、病……」


「ええ。心臓と肺の病よ。体が徐々に弱っていって、最終的には自分では動けなくなる奇病」


「すごい……病名がわかるんですね。医者は、原因は不明だと。延命措置のために、完全回復薬エリクサーをとりあえず飲んどけって」


「まあ、対症療法としては妥当ね。ただ……お金がかかるでしょ、完全回復薬エリクサーは高価だし」


「はい……」


 ふむ、とリフィル先生がうなずく。


「妹ちゃん……根治できるかも」

「こんち?」


「完全に快復するってこと……きゃっ!」


 俺は先生の手を握って、顔を近づける。

「お願いします! 妹を助けてやってください!」


 今までどんな名医に診察してもらっても、病名すらわからないでいた。


 でも先生は一発で病名を言い当てた。


 たしかに妹は肺を患ってるようだったし、体力が年々低下していた。きっとそのイマンシ病ってのが原因なんだ。


 誰もわからなかった病名を言い当てた、名医であるリフィル先生なら、きっと妹を治してくれるはず!


「お願いします! 妹を、どうか!」

「わかった。わかったからガンマちゃん。落ち着いて」


 ふと、俺は冷静になって、今どんな態勢なのかを改めて見返す。


 下着+白衣の、巨乳の美人先生を、俺が押し倒してる。


「す、すみません! すぐにどきま……わわっ!」


 リフィル先生が俺の腕を引っ張って、抱き寄せる。


 すぐ目の前に大きな胸があった。顔に当たる柔らかな乳房は暖かくて、軟らかくて……とても甘い香りがした。


「ふふ……かわいいわガンマちゃん。ほんと【あの子】みたい……」


「あの子?」


 リフィル先生が答えない。ただ、さみしそうに微笑んだままだ。


「……フェリサちゃんを治す方法は、わかってる。でも……今の私にはできないの」


「そんな……治療法わかってるのにどうして? それに……今のって……まるで昔はできたみたいに」


「そうね……昔の私なら、できたと思う。でも今は……」


 先生の体が、震えてる。

 きっと何かつらいことがあったのだと、目のいい俺はわかった。


 それも半端ではないつらさだ。

 たとえば、そう……。


「【あの子】って子が、関係あるんですね。だから、治療できなくなったと」


「……ほんと、ガンマちゃんは鋭いなぁ」


「目だけはいいんで」


 よしよし、とリフィル先生が俺を抱いたまま、頭をなでる。


 ほんとはこんな恥ずかしい態勢から、いち早く脱したかった。


 けれど彼女は俺を抱いていると、少しずつだが緊張がほぐれているように見えた。


 彼女と【あの子】とやらの間に、何があったのかわからない。


 何がトラウマになっているのかも、また。


 それでも……。


「嫌がらないのね」

「ええ。先生の気が少しでも安らぐなら」


「……そう。優しいのねガンマちゃん。お姉さん、惚れちゃいそうだわ」


 しばらくの沈黙があった。


 そして、ぽつりという。


「私……ね。弟がいたの。可愛い弟。でも……死んじゃった。私のせいで……」


「先生のせいで……? 何があったんですか?」


「……ごめんなさい。それ以上は、ちょっと」


 先生もメイベル同様、悩みを抱いていたんだ。


 自分の治療ができなくなるレベルの、トラウマが。


 今は……話を聞いてあげることしかできない。


 けれど……。そばに居てあげることはできる。


「ねえ……ガンマちゃん。たまにでいいから、お姉さんにこうして……ぎゅっとさせてくれる?」


「……はい。もちろんです」


 やましい気持ちなんかではない。


 仲間がつらいときは、支えてあげたい。

 ちょっとの恥ずかしさなんてたいした問題じゃないのだ。


 こうして俺を抱くことで、少しでも、彼女のトラウマが緩和するというのなら。 


「「…………」」


「あ……」


 俺とリフィル先生が抱き合う姿を、がっつりフェリサと、リヒター隊長に見られていた。


「ん? なぁに、続けてくださいどうぞぉ~」


「いやいやいや!」


 俺はばっ、と先生からどく。

 言及せず部屋を出て行こうとするリヒター隊長の手を取る。


「誤解です!」

「大丈夫、軍部は職場恋愛を許容してますよぉ~」


「いやだからそれが誤解なんですって!」


 するとフェリサが、がしっ、と俺の腕をつかむ。


「…………」


 ぎゅ~~~~~~~~~~~!


「いってええええええええええ! 折れる! フェリサ! 腕が折れちゃうぅうううううううううううううううう!」


 騒がしい俺たちの様子を見て、リフィル先生は笑っていた。


 さっきまでの悲しい微笑みじゃなくて、心から、楽しそうに笑っている。


 俺は、そのほうが何万倍も美しいと思ったのだった。


「…………」


 バキィッ……!


「折れたぁああああああああああ!」


「あらあら、大変。すぐに治療するわぁ♡ 大丈夫、骨折くらいなら秒でなおるから」


 バキッ……!


「フェリサぁああああああああ! 腕ぇええええ! 治せるからって痛いんだぞぉおおおお!」

【★読者の皆様へ お願いがあります】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


現時点でも構いませんので、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!


お好きな★を入れてください!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] エリクサーは高価が効果になってる誤字報告
[一言] 骨折り損のくたびれ儲け(違)
[一言] 最終話。主人公、病気の妹に56される。 いろんな意味で妹つよし^^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ