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37.故郷の村へ



 人外魔境スタンピードの調査に来た俺たちは、妹のフェリサに途中で出会った。


 妹の誤解を解いた俺たちは、故郷の村を訪れていた。


「ここが俺の故郷、【ソノイの村】です」

「ほうほう……ここがガンマ君の故郷ですかぁ。なんというか、思ったより近代化してますねぇ」


 ソノイの村は荒野のなかにあれど、外壁で囲ってあり、見張りやぐらも存在する。


 建物もレンガ作りのしっかりしたものがあちこちに並んでいる。


「ガンマだ」「がんまー」「がんまかえってきたー」


 村の子供達が俺を見て手を振ってくる。

 みんなこんがり小麦色に日焼けしており、目の下に牙のような、紅を入れてる。

「ただいま。村長は?」

「いえー」「がんま待ってるー」


「わかった。ありがとな」


 子供達は弓や槍を手に、村の外へと走って行った。


「あの子らも狩猟をしてるんですかぁ?」


 リヒター隊長が興味深そうに周りを見回しながら言う。


「あ、はい。うちで狩りができないやつはいません。3歳で弓の使いかた習います」


「それはそれは、狩猟民族ですねぇ」


 レンガの家の前では、狩ってきた獣の解体作業してるやつや、皮をなめしたりしているやつらがいる。


 みな俺の後ろからついてくる、リヒター隊長とリフィル先生が気になってる様子。


 だが二人に声をかけてくる様子はない。

 鋭い視線を二人に向ける。武器に手をかけているやつすらいる。


 リフィル先生は周りの視線に気づいたのか、小声で聞いてくる。


「私たちを敵だと思ってるのかしら?」


「いいえ。ただ、敵というか、うちの村閉鎖的なんで、基本よそ者を歓迎しないんです」


「なるほど……誰に対しても例外なく、警戒してるのね」


「はい。何もしなきゃ襲ってきません。何もしなきゃ、ですけど」


 ほどなくして、俺は村長の家に到着した。


「ガンコジーさん、帰ったぞ」

「頑固じいさん? あだ名です?」


「いや、本名」

 

 俺が中に入っても、じいさんの姿は見えない。


 かーんかーんかーん、という音はするので多分いると思う。


 俺は部屋の奥へと向かう。


「おお、こんな立派な鍛冶場があるなんて! すごいですねぇ!」


 リヒター隊長が部屋の中を見渡して、感心したように叫ぶ。


 ハンマーとか炉とか、あと完成したいろいろな武器がその辺に転がっている。


 炉の前には一人の小柄な、毛むくじゃらのじいさんが座っていた。


「ガンコジーさん。帰ったよ」

「……ガンマか」


 作業の手を止めて、よいしょとガンコジーさんが立ち上がる。


 リフィル先生がじいさんを見て目を丸くした。


「あら、ドワーフかしら?」

「そうじゃよ。なんじゃ、珍しいかの?」


 よたよたと歩きながら、じいさんが俺たちの前へとやってきた。


 背は低く、筋肉質。ずんぐりむっくりの体型。


「ごめんなさい。ただ、ドワーフってもっと南の国にいると聞いていたもので」


「たしかに、ドワーフのほとんどが、我が故郷【カイ・パゴス】にいる。外に出る職人はほとんどいない。ましてや、こんな西の果てに居を構える変わり者ドワーフなんぞ、わしくらいだろうな」

 

 すっ、とガンコジーさんがリフィル先生に手を伸ばす。


「ガンコジーじゃ。このソノイ村の村長をやっとる。そこの二人の、いちおう保護者じゃな」


 リフィル先生が取ろうとしたその手を、横から、リヒター隊長が奪い取る。


「初めましてぇ! ボクぅ、リヒター・ジョカリっていいますぅ! お噂はかねがね!」


「な、なんじゃ……ガンマ。おまえさん、知らぬ間に二人も嫁こさえてきたのか?」


「違うよ。この二人は俺が世話になってる人たち。嫁じゃない」


 先生は「あらー……」と残念そうにつぶやく。リヒター隊長は「そんなことより!」と眼をキラキラと輝かせながら尋ねる。


「ガンマ君のお爺さまですよね? ドワーフなのに? ガンマ君とは血が繋がってるんですか? そもそもフェリサちゃんとは? あと武器の製法を是非!」


「お、落ち着け……そういくつも質問されても答えられんわい」


 ややあって。


 俺たちは居間へと移動する。


「で、なんじゃ? ガンマよ。おまえ、何しに帰ってきた? 確か軍に所属してるんじゃったな」


「ああ。このあたりで……あー……最近変な蟲のモンスターが観測されたっていうから、その調査に」


 魔蟲族のことは、トップシークレットだ。


 じいちゃんだろうと、部外者にもらすわけにはいかない。


 俺は細部をぼかしてじいちゃんに事情を話し、協力して欲しいと頼む。


「なるほどな。まあ血は繋がらないとはいえ、孫の頼みじゃ。協力してもいい」


「それ! やっぱりガンマ君とお爺さまは、血が繋がってないんですかぁ?」


 ずいっ、とリヒター隊長が身を乗り出す。


 ガンコジーさんは引き気味になりながらうなずく。


「こやつは孤児じゃよ。というか、この村の子供の大半はそうじゃな」


「ということは……フェリサ君もですかぁ?」


「ああ。わしもガンマもフェリサも、おたがい血が繋がっておらん。この人外魔境スタンピードの地は、流れ者が行き着く場所として有名だからな」


 この土地に住む子供達の大半がわけありだ。


 こんな西の、獣がうろつき、水も食料も手に入らない場所に好んでくる物好きは居ない。


 俺にも、フェリサにも、それぞれ人には言えないようなバッグボーンがある。


「じゃあガンマちゃんからしたら、フェリサちゃんは義理の妹ってことなのね」


「…………」


 はて、とフェリサが首をかしげる。

 この子は難しいことがよくわからないのだ。何せ1+1すらわからないからな……。


「協力はしてもいい。だが今村は厄介な問題を抱えておってな」


「厄介な問題?」


「ああ。近頃、妙な種族が村にちょっかいかけてきよってな。人っぽい蟲で……」


「! それって……」


 俺たちは顔を見合わせる。


 人っぽい蟲。魔蟲族の可能性が高い。


「実は俺たちも、その人っぽい蟲の調査に来てたんだ」


「おお、そうだったか。ならば……頼む。ガンマ。それに、帝国軍人のお二人、どうかソノイの村に力を貸してくれんかの」


 もちろん、と俺たちはうなずく。


 これで確定したな。この人外魔境スタンピードの地に、魔蟲族がいるってことが。

【★とても大切なお知らせ】


新作投稿しました!

タイトルは、


『天才錬金術師の私は気ままに旅する~世界最高の宮廷錬金術師、ポーション技術の衰退した未来の世界に転生し、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖女扱いされていた件』


ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!


リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n7910hu/

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― 新着の感想 ―
[一言] 時系列の目安になりそうな爺さん、ガンコジー
[一言] ソノイにガンコジーかぁ...
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