237.救世の弓聖
魔蟲王を討伐し、慌ただしい日々が続いた。
魔蟲王による被害を受けた、街の修復や、魔蟲の残党狩りがあったからだ。
そして少し落ち着いた頃合い、俺は帝城へと呼び出されていた。
「失礼します」
謁見の前に行くと、そこには、皇帝陛下が玉座に座っていた。
「よく来たね、ガンマ」
隣には皇女アルテミスがたたずんでいる。
俺は陛下の前で跪く。
「ガンマ、体の調子はどうだい? だいぶ魔蟲の細胞に浸食されていたのだろう?」
一時期、俺の体はほぼ完全に魔蟲族になっていた。
それは、俺の中に魔蟲の細胞があったからだ。
「体調は万全です。リヒター隊長によると、魔蟲細胞は徐々に普通の細胞に成り代わってるそうで。しばらくしたら……俺は元の体に戻れるそうです」
リヒター隊長曰く、魔蟲王が消えた影響だろうとのこと。
魔蟲王には、魔蟲達の細胞を活性化させる能力があったそうだ。
王が死に、その能力も消えた今、魔蟲細胞は徐々に活力を失い、消えてしまうだろうと。
「陛下、申し訳ないです」
「ん? どうしたんだい?」
「俺は今より確実に弱くなってしまいます。そうすると、帝国に迷惑をかけてしまいます。今後役に立たないと思ったら切り捨ててください」
ぽかん……とする皇帝陛下たち。
あれ?
「ガンマ様。大丈夫ですよ」
アルテミスが微笑みながら言う。
「魔蟲の力がたとえなくなったとしても、あなたが世界を救った事実は変わらない。それに、もし貴方個人の力が衰えても、あなたには素晴らしいチームがいるでしょう?」
……そうだった。
アルテミスの言うとおりだ。
「あなたはもう胡桃隊になくてはならない存在ですもの。それに、あの部隊は、たとえあなたが弱体化しても、貴方を理不尽に追い出すようなことはしないでしょう?」
……そのとおりだ。
冒険者のときに、所属していたパーティとは違う。
「胡桃隊のメンバーとあなたとは、深い絆で結ばれてる。だから……弱くなっても大丈夫……そうでしょう?」
「はいっ!」
俺は笑って、はっきりと、そう答える。
皇帝陛下達も笑ってくれた。
「これからもよろしく頼むよ、救世の弓聖、ガンマ・スナイプくん」