236.終止符
《ガンマSide》
人型決戦魔導人形兵を操縦していた、俺。
オスカーとリヒター隊長が、魔蟲王の気を引いてくれた。
そのおかげで隙ができた。
リヒター隊長、マリク隊長合作の結界装置、虫かごが発動。
黒い蟲を結界内に閉じ込めた後、俺とメイベルが力を合わせ、全力の魔法矢を放った。
俺の持つ魔法矢、すべてを合成させて作った渾身の一撃は……魔蟲王を丸ごと消滅させた。
「ふぅ……」
どっ、と体から力が抜けた。
ついに、やったんだ……。任務を、達成した。
「お疲れ、ガンマ」
「メイベル……」
後部座席に座っていたメイベルが、優しく微笑みながら、労をねぎらってくれる。
それがうれしくって、俺もまた笑っていた。
「メイベルも、お疲れ」
魔導人形の制御を一人で行っていたのだ。
なんという腕だろう。
「君のおかげで魔蟲王を討伐できたよ」
「何言ってるの! ガンマがいたおかげでしょ?」
「いや俺はただ魔法矢ぶっ放してただけだし」
「そんなこと言うなら、あたしはただ魔導人形動かしてただけだし」
いやいや、とお互いが譲り合う。
だが……それがおかしくって、笑ってしまった。
「おいおい、おれたちも頑張っただろう?」
肩に座っていたマリク隊長が、ニヤニヤと笑う。
「そうでしたね」
モニターには、胡桃隊の面々、そして帝国兵、帝国民たちが歓声を上げている。
『ありがとうガンマぁ!』『弓聖さま、ありがとぉお!』『弓聖さまぁ……!』
皆が俺を、褒めてくれる。
俺の頑張りを認めてくれる。
……思えば、俺は遠くにきたものだ。
元はSランクパーティで、何をやってるのかわからない、地味な弓使いだった。
だがそれが、こうして弓聖となって、世界を救うことに一躍買うことができた。
環境を変えてくれたきっかけを、もたらしてくれたのは……。
「メイベル、ありがとう。君に出会えて良かった」
メイベルは目を丸くすると、ぬふーっと笑う。
そして胸を張って言う。
「どういたしましてっ。でもでも、あたしもガンマに出会えてよかったよ!」
ぎゅっ、とメイベルが俺に抱きついてくる。
俺もまた抱きかえして、唇を重ね合う。
「ったく、おっさんがいるってこと、忘れていちゃいちゃしやがってよぉ」
マリク隊長がそう茶化すけども、俺たちは気にならなかった。
……こうして、長い長い魔蟲と帝国の戦いに、終止符が打たれたのだった。