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234/242

234.別れ



 オスカーはリヒターを連れて、上空へとやってきていた。

 ガンマの放った強化した竜の矢(レーザー・ショット)のおかげで、分厚い虫たちの防壁を突破できたのである。


 久々に見る青い空の世界。

 遠く離れた場所に、黒い球体が浮かんでいた。


『隊長、あの中にジョージ・ジョカリがいます』


 ガンマの目はどうやら、地上にいても、あそこの中に兄が居ることを見抜いているようだ。

 理屈は正直理解できていない。


 どうして遠く離れた地上から、あそこに生物が居るとわかっているのか。

 ……だが、ガンマの目は人間を超越し、神に等しい物に進化してるのは知っていた。


 だから、わかるのだろう。


「オスカー君、あそこまで運んでくれ」

「了解」


 オスカーがエア・バードを走らせる。

 魔蟲王にとってオスカー達は敵だ。近寄らせてはいけないはずだ。


 ……だが、こちらに向かって攻撃してくる気配はない。


「罠かな……?」

「……大丈夫。違うから」


 どこか、リヒターは穏やかな表情をしていた。

 そして黒い球体の前までやってきた。


「兄さん」


 リヒターは球体に向かって言う。


「あなたの負けです」


 兄からの返事はない。

 その間にも、空には穴が開いている。


 開いた穴を必死になって塞ごうとしてる……が。

 明らかに間に合っていない。


「ガンマ君の相手で手一杯で、ぼくらを攻撃することができないのでしょう?」


 やはり答えはない。

 だが、もう誰の目にも魔蟲王が限界であることはわかっていた。


「兄さん……あなたの考え方は、間違っていたよ。この世界で一番強いのは、人間さ。あなたが、弱いと見下していた、その人間の弱さこそが……人を強くする力だったんだよ」


 魔蟲王は答えない。おそらくもう、兄は現状を認識できていない。

 彼に自我は残っていない。


 リヒターは懐から黒い塊を取り出す。

 そして、ぺたり、と球体に貼り付ける。


 ……迷いは無かった。覚悟は済ませてあったから。


「さようなら、兄さん。あなたは……ぼくの目標だったよ」


 リヒターは涙を流しながら、オスカーの後ろに座る。

 オスカーは静かにエンジンを始動させ、その場から離れる。


 十分に下降して、距離を取ってから、オスカーは懐からスイッチを取りだして押した。


 ……瞬間、頭上から凄まじい爆音が鳴り響くのだった。

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