233.空の上で
オスカーはリヒターを連れて空を駆ける。
無数の細かい蟲が彼らに襲いかかってくる。
だがオスカーは片手で銃を、そしてもう片方の手でエア・バードを操作し、それらを撃退・回避していく。
「オスカー君、操縦変わるよ!」
取りこぼした虫たちがオスカーの肌を食い破っていく。
リヒターが操縦すればなるほど、迎撃のみに集中できるだろう。
「はっはー! レディにそんな危ないことさせられるわけないだろぉお?」
……オスカーはリヒターを無傷の状態で送り届けようとしてるのだ。
「どうして、ぼくのために……?」
「あなたがか弱きレディだからさ! 乙女のために命を燃やすことができる、それが! 紳士としての何よりの喜びだからね!」
にかっ、とオスカーはリヒターに笑いかける。
リヒターは目を丸くして、微笑みかける。
「ありがとう……今、きみ最高にかっこいいですよぉ」
「ふはっは! 美女に褒められてとてもうれいしよ!」
「び、美女って……ぼくはそんな……きれいじゃあないし……」
「何を言ってる、比類無き美女ではないか!」
「や、やめてよ……もう……」
そんな風に雑談しながら、オスカーはリヒターの心を落ち着かせようとしていた。
彼女はこれから家族を殺さねばならない。
とても辛いことをしないといけない。
だから……せめて気が紛れるようにしゃべっていたのだ。
戦い、操縦しながら、である。
「……優しいね、オスカー君」
きゅっ、とリヒターがオスカーに抱きつく。
「……ありがとう」
そうこうしてると、黒龍がすぐ近くのところまでやってきた。
リヒターは兄のいる場所に当たりを付けてるようで、場所を指示する。
オスカーはそこめがけてエア・バードを向かわせるのだった。