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212.獣狩り
全身を覆う黒い鎧。
外から見れば、俺は魔蟲族に見えるかもしれない。
かも、ではないな。
どう見ても俺は魔蟲族のそれだ。神威鉄をしのぐ硬度を持つ鎧。
そして体から発する異様な闘気。
顔を覆うフルフェイスマスク。
『は、はは! なんだガンマ君! 君も私と同じ結論に至ったんじゃあないか!』
魔蟲王がゲラゲラと笑う。そこには、俺を馬鹿にするニュアンスが過分に含まれていた。
『人を捨てた私を否定し! 自分は人間だと主張していた君が! 人を捨て虫になったのか! なんとも滑稽だなぁ!』
魔蟲王に馬鹿にされても俺の心は動かない。揺らがない。
俺は弓を構える。
じーさんの作ってくれた黒い弓。
俺はそれをしっかりと握る。……じーさん、ありがとう。
あんたの作ってくれた弓のおかげで、俺は……こいつを倒すことができる。
「来いよ。獣。人間が狩ってやってる」
人外となりはて、暴れ回るこいつは獣だ。
獣を狩るのは狩人……つまり、人の仕事。
俺は人として、狩人として、こいつを討つ。