209.その程度
リヒター隊長によると、魔蟲王は時を止めているという。
「そ、そないこと可能なんか……?」
妖精リコリスが呆然とつぶやく。俺も同じ気持ちだ。
だが……同時に腑に落ちてる。
魔蟲王の異次元な動きの正体。
時を止めて、やつだけ動いてるならば説明が付くからだ。
「多分だけど、やつは【時王の神眼】を手に入れたんだと思う」
「じおうの、しんがん……?」
リヒター隊長がそう言うと、魔蟲王がにんまりと笑う。
「ご明察。さすが我が妹」
魔蟲王の額に縦に線が入り、そこから、黄金の眼球がのぞく。
その瞳からは異質な魔力感じられた。
「これぞ、三大魔眼が一つ。【時王の神眼】。神が作りし神器の一つ。その効果は、【時間操作】」
「時間操作やて!?」
信じられないのか、リコリスが叫ぶ。
時間を操作する。時を支配できるのであれば、勝ち目がない。そう考えてもしょうがない。
なぜなら時を止めれば、あいつはこちらを一方的になぶり殺しにできるのだからだ。
「歴史上、時王の神眼使いは、数えるほどしかいない。だが、私は虫どもを使って大規模な包囲網を強いた。そして……見つけたのだ。時王の神眼使いのミイラを。そこから、私は奪ってこうして手に入れたのさ。最強の力をね」
……なるほど、なるほどな。
俺は……。
「良かったよ」
俺は、笑った。
「おまえの奥の手が、【その程度】であって」




