207.奥の手
憤怒の矢を魔蟲王に食らわせることに成功した。
細胞が存在する限り無限の爆発を起こす強力な魔法矢。
爆発がやむ。それすなわち、相手が完全にこの世から消滅したということになる。
「…………」
フェリサが一瞬、気を抜いた。俺が敵を倒した。そう思ったのだろう。
「フェリサ……!」
俺は妹を突き飛ばす。
彼女が居た場所にレーザーが通り過ぎていった。
「おや、惜しい」
「魔蟲王……!」
ジョージ・ジョカリが五体満足状態で、俺たちの前に立っていた。
「…………」
リヒター隊長が歯がみする。完全にやっつけたと、彼女すらも思っていたのだろう。
俺は第二の矢を構えながら尋ねる。
「おまえは倒したはずだが?」
「そうだね。一度は倒したよ。けど……私は生きてる」
……何を言ってるんだこいつは?
息づかいや視線から、こいつが嘘を言っていないことは理解できた。
だが、いや、だとしても理解できない。
憤怒の矢で完全に葬り去ったやつが、どうして、今ここにいるのだ?
「良い攻撃を教えてもらったよ」
魔蟲王が右手でピストルを作る。
「憤怒の矢」
その人差し指から放たれたのは、俺が完成させた奥義、憤怒の矢。
炎の矢がこちらめがけて飛んでくる。
俺は瞬時に憤怒の矢を、敵の矢めがけて放った。
ドゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
相打ちにより、味方はノーダメージだ。
が、相手の手札を増やしてしまったことには相違ない。
くそ。あいつは何か奥の手を隠してる。
それを見破らないと、他の奥義を使っても、やつを完全消滅させることはできない……。