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200/242

200.説得失敗

【★お知らせ】

狩人、漫画版がスタートしてます!


【ニコニコ静画】

https://seiga.nicovideo.jp/comic/68464



 魔蟲王の胎児に、自分の脳を移植した、ジョージ・ジョカリ。


「兄さん……あなたは……一体これから何がしたいんですか?」


 リヒター隊長が、兄である、ジョージに尋ねる。


「貴方の目的は、人間を超越する存在を作ることでした。……あなたはその目的をかなえた」


 確かに、魔蟲となることで、人間をこたえた。

 目的は果たしたと言える。


「知的好奇心は満たされたでしょ? ねえ……もう、いいでしょ」


 ……弱々しく、隊長がつぶやく。

 そこにいたのは、リヒター隊長ではなく、リヒター・ジョカリ。


 軍人ではなく妹として、兄に語りかける。


「もう……十分楽しんだでしょう? なら……」


 ……隊長の拳が震えている。

 ……やっぱり、この人は兄を殺したくないんだ。


「確かに、私は魔蟲の王となったことで、目的を達成した。私が投降し、魔蟲どもに人を襲うなと命令すれば、軍部が私を処分する必要はなくなる。もっとも、拘束はされるだろうけれどね」


 ジョージ・ジョカリは自分の置かれてる立場を、そして……妹の殺したくないという思いも、理解してるようだ。


「なら……」


 ……でも、リヒター隊長の表情は、明るくない。

 まるで、兄がどう答えるのか、わかってるようだ。


「しかし私は投降なんてしない」


 にぃ……とジョージ・ジョカリが笑う。

 リヒター隊長の、やっぱり……といった感じの、諦めの表情が、見ていて悲しくなった。


「せっかく人を超えたのに、なぜ人に縛られる必要がある? 今の私には翅があるのだ。この世界を、自由に飛び回れる翅がね?」

「…………じゃあ、なにがしたいのさ!? 兄さん!」


「全人類の魔蟲化だよ」


 ………………何を言ってるのだ、こいつは?

 全人類の、魔蟲化……だって……?


「ガンマ君、そしてガンマ君を追放したあの男……ええと、名前はどうでも良い。彼らから着想を得た。人を魔蟲にする技術を。そして……魔蟲王となったことで、それが可能となった!」


 にぃい……とジョージ・ジョカリが笑う。

 その表情からは、本気……いや、狂気を感じさせた。


「人を殺し、そして魔蟲へと改造する! 全人類を私と同じレベル……つまり魔蟲にする! そして、魔蟲の王たる私が! この星を支配するのだ!」


 ……そうか。

 全人類を魔蟲にすれば、魔蟲の王たるジョージが、人類を支配できるのか……。


 魔蟲は王に従う習性があるからな。


「……結局、世界征服、なんて……陳腐な目的のために、今まで暗躍してきたんですね。なんて……くだらない!」


 リヒター隊長が、兄をにらみつける。

 そこには……覚悟がこもっていた。


「皆さん……新たなる魔蟲王は、人類を皆殺しにしたあと、魔蟲にして、支配するつもりのようです。あいつは……もう人間ではない。説得には応じませんでした」


 言葉で、相手を説得できなかった。

 ならもう……。


「やるしか、ありません……」


 リヒター隊長が、自分にそう言い聞かせてるように、俺には聞こえたし、事実そう見えた。

 でももう、やるしかない。

 

「ジョージ・ジョカリ」


 俺は弓を持って、前に出る。


「俺は……いや、俺たちはあんたを、駆除する。人間として。軍人として!」


 狩人として、ではない。

 狩人はただ己の獲物を得るためだけに、弓を引いた。


 でも今ここにいる俺は、軍人。

 人類を守るのが、俺の使命!


「残念だよ、ガンマ君。君なら私の優秀な右腕になれると思ったのに……いいだろう」


 ジョージ……いや、魔蟲王が翅を広げる。


「最後の戦いといこうか」

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