199.理由
ジョージ・ジョカリは魔蟲王の胎児を食らって、魔蟲の力を手に入れたらしい。
「あり得ないですぅ……」
ジョージの妹、リヒター隊長が首を振る。
「魔蟲をただ食べたところで、魔蟲の特性を得られるわけがないのです。魔蟲の体組織は人間にとって毒素のモノ。ガンマ君たちは、少量の毒を幼い頃から摂取していたから、生きながらえてるだけですぅ」
つまり、大人になってから急に食ったジョージは、魔蟲の毒で、本来なら死んでしまう……といいたいらしい。
「勘違いしないでおくれ、愚妹。私はなにも、大人の姿になってから食べたわけじゃないし、正確に言えば……私は虫を食ってはいない」
「どういう………………?」
リヒター隊長が困惑する。
だが、俺はその話を聞いて、もしや……と思った。
俺の目は、すべてを捕らえる。
ジョージ・ジョカリの体。それは……一度見たことある、やつの体とは、別のもの。
まさか……。
「その、体……魔蟲の胎児そのもの!」
「ほう……気づいたようだね。さすがガンマ君。いい目をしてる」
俺の言葉を聞いて、リヒター隊長も気づいたようだ。
「……魔蟲の胎児を摘出し、その脳に、自分の脳を……移植したのですかぁ……?」
つまりやつは、魔蟲の体に、人間の脳を移植した、ということだ。
「正解。だが正解にたどり着くのが遅かったね。さすが、愚妹」
「……クレイジーです。あなたは……完全にいかれている!!!!!」
自分の目的のために、自分の体すら捨て去って、魔蟲と融合してみせるなんて……。
リヒター隊長の言うとおり、正気とは思えない所業だ。
「君らの共感なんて得られなくていい。私は……満足だ。私の理想を、実現できたのだからね」