183.新兵器
二手に分かれ、俺たちは前に進む。
Aチームのメンツを引き連れ、俺たちは上へ。
逆にBチームは人質のいる地下へと向かう。
……メイベルがいるのは地下。
本当だったら俺もそっちへ行きたいが、俺は魔蟲王を倒す切り札。
討伐部隊にどうしても入っていないといけない。
……頼んだぞ、オスカー。
巨大樹の中は非常に入り組んでいる。
いくつもの通路があって、正しいものを選ばないと、直ぐに迷ってしまいそうだった。
だが、迷う心配はゼロである。
リヒター隊長の手には、板状の魔道具が握られている。
そして、もう片方の手には小さな箱が。
「魔法蜻蛉、起動」
箱が開くと、そこから数え切れないほどの蜻蛉が出てくる。
それは俺が魔法矢、蜻蛉の矢で作るものと同じだ。
「……それはなんですか?」
初めて見るシャーロット副隊長が、リヒター隊長に尋ねる。
「ガンマ君の魔法矢を、再現した新型魔道具、魔法蜻蛉ですよぉ。効果はガンマくんが使うのと同じですぅ。前々から便利な魔法だなって思ってたんでぇ」
魔法矢は、とどのつまり魔法の一種だ。
ならば魔道具で再現できる……とリヒター隊長が考え、魔法蜻蛉を作り出したのである。
蜻蛉たちがダンジョンを飛んでいく。
そして、その目をとおして見た情報が、リヒター隊長の端末に入力させていく。
「ほい、ダンジョンのマップ完成ぃ~。すぐに情報を共有しますよぉ」
俺たちに配布された、通信用の魔道具。
これは音声情報だけでなく、視覚情報を伝えることができる。
Bチームにもこの地図が共有されたことだろう。
これなら、俺たちも向こうも、最短で目的が達成できる。
「すごい……」
「何言ってるんですかぁ。ガンマ君の技がなければ、魔法蜻蛉は生み出せなかったんです。あなたの功績ですよぉ」
でも、俺はやっぱりリヒター隊長が凄いと思った。
この人が味方で、本当に良かった。
「進みましょう」