180.最新兵器
俺たちは妖精郷の内部へと侵入する。
Aチームは魔蟲王討伐に、俺、シャーロット副隊長、フェリサ、リヒター隊長。
Bチームは、捕虜奪還に、マリク隊長、アイリス隊長、オスカー、リフィル先生。
二手に分かれ、それぞれの目的のため行動する。
『あー、あー、テステス。聞こえるですみなさん?』
右耳から、リヒター隊長の声が聞こえる。
リヒター、マリク隊長の共同で作られた、通信用魔道具(イヤリング型)の効果だ。離れた相手と通話できる代物。
これは一人と会話するだけでなく、多数にも声を同時に送ることが可能だ。
さらに、通話が混戦しないように、通話相手を選ぶこともできる。
『2チームに分けましたが、魔蟲王の城へ侵入するまでは一緒に行動してもらいますからねぇ。置いてかれないように注意してくださぁい』
アイリス副隊長の仕入れた情報によると、妖精郷には魔蟲王の住む城が存在する。
捕虜はその地下、魔蟲王はその頂上、玉座の間にいるとのこと。
つまりは城までは固まって行動する……が。
『まあ向こうさんも当然、動きを予測し、迎撃してくると思いますからねえ』
木々のカゲから、黒い外郭に包まれた魔蟲、そして魔蟲族が現れる。
魔蟲はただの魔蟲ではない。
『どうやらガンマ君が人外魔境で出会った、巨大蛾のクローン体みたいですねえ』
……俺がやっとの思いで倒した巨大蛾。その複製が、複数体、俺たちを相手するようだった。
『しかも魔蟲族は剛剣のヴィクターのクローン。これは手を焼きそうですよぉ……』
だが、それは今までの俺たちなら、だ。
『そこで新装備の出番です。魔法戦車部隊、前へ!』
魔法陣が輝くと、そこには巨大な乗り物が出現する。
硬い魔蟲の外郭を加工してできた、不思議な乗り物だ。
車輪の上に箱が乗っている。そして、巨大な砲台が一つ付けられてる。
『これぞ、対魔蟲最新兵器、魔法戦車! 魔法狙撃銃をさらにグレードアップした、超弩級魔法狙撃銃を備えた、超兵器ですよぉ!』
魔法戦車はキュラキュラと音を立てながら前にでて、砲身を巨大蛾クローンに向ける。
『魔法弾、装填! 放てぇええええええええ!』
どごぉおん! という音とともに砲弾が発射される。
それは巨大蛾クローンの硬い外郭をぶち破り、ひびを入れる。そして……。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
『どうだ! 砲弾を内側につきさし、内部から爆発させる、二段構えの最新魔法弾の威力はぁ!』
最新の弾丸には、1.貫通する魔法、2.爆発する魔法の二つが組み込まれてる。
魔蟲の外殻は、外部からの攻撃、特に属性攻撃をほぼ全て無効化する。
ならば、外殻の内側から爆発させれば良い。
……魔蟲を研究したことにより、リヒター隊長が生み出した、最新兵器が、今絶大なる効果を発揮していた。
 




