172.
俺、ガンマ・スナイプは剛剣のヴィクターとの戦いに勝利した。
その後、一旦帝都へと戻った。
帝都はひどい有様だった。
建物のほとんどが壊されている。だが、阿鼻叫喚の地獄絵図……とまではいっていなかった。
けが人や死人が、見当たらないのだ。
おそらく俺の所属する部隊……胡桃隊のみんなが頑張ってくれたからだろう。
「よぉガンマ」
「隊長! 無事でしたか!」
見覚えのあるリスが、瓦礫の上でたばこを吸っていた。
彼はマリク。俺たち胡桃隊の隊長だ。
急いでマリク隊長の下へいき、ひょいっと持ち上げる。
「勝ったか?」
「ええ、勝ちました」
「そっか。あのやべえやつを一騎打ちで勝つなんて、ほんと、おまえはたいしたやつだよ」
にっ、と隊長が笑ってみせる。仲間の敵を排除できたことが誇らしくて……けれど、まだ状況はいいとは言えない。
「他の連中もおのおのの敵を撃破したところだ」
現在、帝都は魔蟲族どもの襲撃にあって、壊滅状態にある。
現れた強敵を、俺の仲間達が手分けして倒した。だが……メイベルは敵に連れ去られてる状況だ。
「……メイベル」
「ま、あいつなら大丈夫さ。それにあいつの姉ちゃんも追いかけてるしよ」
連れ去られたメイベルのことを、姉アイリス隊長が追跡してる。
「アイリス隊長からの連絡は?」
「そろそろ来るんじゃあないか……? っと、言ってるそばから」
頭上を見上げると、1匹のカラスが、俺たちの上で旋回していた。
カラスは俺の肩に止まると、ぱしゃりと水のように消える。
「アイリスの能力で作った、影のカラスだな」
肩には1枚の羊皮紙が巻かれた状態で置いてあった。
俺はそれを手に取って、隊長に渡す。
隊長は書類を読み……はぁ、と息をつく。
「隊員を招集だ。作戦会議を開く」