166.狂戦士
俺は合成矢の掛け合わせにより、新しい魔法矢を使えるようになった。
流星群の直撃を受けたヴィクターはというと……。
「おー、生きてるじゃん。がんばるねー」
やつの身体を覆っていた鎧は完璧に粉々に砕けていた。
腕は吹き飛ばされて、片腕だけになっている。
ヴィクターの野郎は、俺に哀れみの目を向けていた。
「なんだよ、その目」
「ガンマ。今の貴様は、暴走する力を抑えられなくなってる」
「あー……? 暴走だって?」
何馬鹿なこと言ってんだこいつ?
俺は、冷静だぜぇ?
「周囲一帯を更地にした。これが戦士のすることか? この土地には動物などの命がいたのだぞ?」
「獣を狩って何が悪い? 俺は狩人だぜ?」
狩人は獲物を狩るのが仕事だ。
動物を殺しちまって、何が悪いってんだよ。
人間殺してないんだから別にいいじゃんか。
「……ガンマ。今の貴様に勝っても、我は嬉しくない」
「別にてめえを喜ばせるために戦ってねえしぃ?」
「ならば問おう。貴様は、なんのために戦ってるのだ?」
……なんの、ため?
そういえば……なんのためにやってるんだ、俺は。
この化け物と、どうして今ここで相対してる……?
「わからねえ……」
本気でわからなかった。
それが、ぞっとした。
戦いには動機がいるはずだ。
それを思い出せないって時点で、おかしい。
……俺は、おかしくなってるのか?
「ガンマ、戻ってこい。おまえは戦士だ。狂戦士ではない」