163.浸食
剛剣のヴィクターとの一騎打ちをしている俺。
だががっかりだ。
「ヴィクター、おまえこんなザコだったんだな」
「ザコ……だと……」
「ああ。人外魔境に居た頃のほうが活きがあったぜ?」
最初に出会ったのは俺の故郷でのこと。
俺はやつから、仲間が逃げるまでの時間稼ぎしかできなかった。
だが今はどうだろう。
……ヴィクターは俺の前で倒れていた。
「拍子抜けだ。弱くなったな」
「……逆だ。貴様が強くなったのだ」
「まあどっちでもいいや。おまえは今俺に負けている。それは事実だ」
魔法矢を使ってヴィクターを圧倒して見せたのだ。
やつの鎧にはあちこちひびが入ってて、剣は何本か折れている。
「くそ……なんて予想外なんだ」
「それって弱いって意味か?」
「つよいという意味だ! ふざけてるのか貴様!」
「そうだよ、ふざけてるんだよ。手ぇ抜いても勝ててしまう、それが今の俺とおまえの実力差だよ」
ヴィクターがぎりぎりと歯がみした後立ち上がる。
闘気を練り上げようとしたところで……。
ばかんっ! と四肢がバラバラになった。
「な、なんだ……何が起きたのだ!?」
「おっせーっつのたーこ」
俺はやつの四肢めがけて鉄の矢を放ったのだ。
しかも、ひびの入ってるところに、正確、4つ連続で。
「くっ……! まだ……」
「だーから遅いっての」
ずどどど! と上空から降り注いだ、無数の矢がヴィクターの身体を蜂の巣にする。
星の矢。無数に分裂する魔法矢。
「いつの間に……」
「この程度も見えてなかったわけ? まったく弱くなったなぁ」
俺は、そうやってヴィクターを圧倒しながら、恍惚の笑みを浮かべていた。
弱者を蹂躙するのって……たのしいなぁ~。
「……貴様ガンマ、魔蟲族の細胞に、身体が浸食されて居るぞ」
どこか俺を気遣うような、そんな声音でヴィクターが言う。
浸食だってぇ?
「だからなんだよ。強い力が手に入るんだったら、いいじゃあないか」
俺の言葉に、ヴィクターが顔をゆがめた。
ちっ……興が冷めるじゃあねえか。




