162.アドレナリン
俺は星の矢を組み合わせた合成矢で、ヴィクターを攻撃した。
無限に近しい数分裂した魔法矢は、ヴィクター、そして周囲の大地を削った。
周りには草の一本も生えていない。
生きとし生けるものの命を全て刈り取ったつもりだったんだが……。
「うーん、これでも殺せねえか~。固いなぁおまえ」
ふ、生きてやがる。
それでこそだ、狩りがいがあるってもんだ。
「ぜえ……! はあ……! はあ……!」
「おいおいなんだ、その程度で息上がってるのか? だっせえぞ」
俺は黒弓を構える。
「狩りはこれからじゃあねえか」
俺の目には全てが見えていた。
筋肉の動き、そして、やつの鎧のもろい部分。
俺が魔法矢を構えると、やつは右に避けようとする。
動きを予測し、なおかつ、鎧のもろくなってる場所めがけて魔法矢を放つ。
んんぅ?
矢を放とうとした瞬間には、やつの鎧は砕け散って、しゃがみこんでいた。
「あれ? なんでおまえ倒れてるの? つーかこれくらい避けろよぉ」
「きさま……その人離れした身体能力……まるで……我らと、同族……」
同族だぁ?
「調子乗るなよ害虫が。人間様を虫扱いすんじゃあねえよ」
ばしゅしゅっ! と俺は弓を構え放とうとする意識より先に、攻撃は完了させていた。
どうやら思考速度よりも、矢を放つ速度のほうがはやいらいし。
はは、なんだこれ、ちょー楽しいんですけど。




