161.最高に、ハイ
帝都外へとやってきた、俺とヴィクター。
すたっ、と地面に降り立つ。
草原に一陣の風が吹く。
俺の黒髪と、ヴィクターの黒い鎧を風がなでていく。
俺たちの間に会話はない。
お互い、相手を殺すことだけを考えている。
俺はじーさんからもらった、黒い弓を手に取る。
弓を持つ左手が黒く染まる。
弓から緑のラインが走り、俺の体に接続された。
どくん……! と俺の体が熱くなる。
まるで、弓のなかに内包されたエネルギーが、俺のなかに流れ込んでくるようだ。
風の音が……消える。
風に舞う草原の草が、ゆっくりになる。
まるで時間がゆっくりになったようだ。
……ああ、良い気分だ。
あのときと一緒だ。
人外魔境の地で、巨大蛾を葬り去ったときと、同じ境地。
すべてがゆっくりに見える。
でも、俺の意識だけはハッキリしていた。
俺の頭は、目は、全身全霊は。
前の前に居る、デカい害虫を駆除することしか、考えてねえ。
あいつをここで殺す。
だが声には出さない。
だす必要も無いからだ。
「ッ……!!! なんだ……今のは!?」
ヴィクターのやつがなんか驚いている。
おかしいな、時間がゆっくりになっているのに、声はハッキリ聞こえるんだ。
ドドドドドドドドド……!
「なんという速射! 矢を放つ手が……見えん! ぬぅうん!」
あれ?
俺何かしたっけ……ああ、そうか。
矢を放っていたのか。
そんな意識ぜんぜんなかったわ。
自然に矢を放っていた。
それがどうやら、え、なに驚いているんだ?
思ったよりも遅かったのか?
なにこんなんで驚いてるんだ?
「もっと早くなるぜ?」
「っっ!?」
俺の手が次々と矢を放つ。
魔法矢は魔力があれば無限に放てる。
はは、今の俺ならマジで無尽蔵に矢を放てそうだ。
「星の矢+星の矢」
俺は、合成矢を使うことにした。
魔法矢を組み合わせて、さらなる効果の矢を放つ技。
星の矢は無数に分裂する、魔法の矢を雨あられと降らす。
それを二つ併せるとどうなるか?
「暴風の合成矢」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!




